音楽レビュー
UNISON SQUARE GARDEN『Populus Populus』
誠実であるための逃走を企てている、そのようなアルバムだと感じた。随所にちりばめられているユーモアや、深刻な問題をわざと子供っぽく扱っている様、要点を強調せずノイズで希釈していく手法、それらは、目的志向なのではなく、目的から逃走するのだが却って目的に吸引され続けるという、彼らの態度を表している。
目的を設定してそこへとまっすぐ突き進む、そのことが逆に困難であることを彼らは薄々感じていたのではないか。目的を何となく感知したまま、その目的に吸引されながら逃走を企てる、そのことによって、目的を迂回的に知悉することができる。誠実であることは目的に直接向かうことだけではなく、目的を迂回することでも達成できるのである。
目的への迂路をいくらでも探索していくことにより、様々な発見がある。目的志向に純化された道筋にはない雑多な異物がある道を進むことにより、却って目的と関連する様々なものが見えてくる。誠実であるということは、まっすぐぶつかるということだけではない。逃走することによって誠実であろうとすること。彼らの音楽にはそのような態度が見てとれる。