音楽レビュー
9mm Parabellum Bullet『Revolutionary』
9mm Parabellum Bulletの音楽の基本にあるのは、苦悩や混迷や行き場の失った情熱である。そういったカオスが、ある種の悪とある種の美を備えて、音楽の根本的な条件である時間そのものを無意味にするような旋律を奏でる。ここには現在も過去も未来もない。すべてが一つの愛へと集約され混合され、自らが音楽であること自体を否定しようとする。
この混迷は、二つの方向へと向かう。一つは悪の方面。つまり、自らのカオスに他人やその他もろもろをも巻き込んで、混迷をより一層混乱させ、その混乱の騒擾の極みにすべてが解消される刹那を見出そうとするのである。
退屈しのぎにそろそろ騒ぎが欲しい
（「Invitation」）
ガラクタに変わるまで
もてあそばれてくれないか
（「命ノゼンマイ」）
このように、他人を大勢招く、他人を蹂躙するまでもてあそぶ、そこに情熱の行き場所を求めて、しかしそれでも情熱はより一層混迷を増し、その混迷が最大限に達したときにふと一瞬の静寂が来る、ふと一瞬の忘我が来る、その瞬間に物凄く澄んだ悪が宿っている。
もう一つは美の方面。つまり、そのカオスを解消させることであらゆるものを消滅させ、そこに全世界的な終末を見てとろうとするのである。
おれはここで消えようとしている
青白くて冷えきった刃で
やさしさすら感じるほどの
深く美しいひとつきで
（「Cold Edge」）
今世紀最大のドラマ
世界中がベルを鳴らす
（「Lovecall From The World」）
個人的な苦悩は全世界的な規模に拡大され、劇化される。世界中がそれに反応し、世界中がカオスに巻き込まれる。だが、そのカオスを世界規模にまで拡大し、そのカオスの源泉となった当の本人は美しく消えようとしている。というより、消えることが美しいのだ。あらゆる混迷・混濁・混乱が消えたとき、その空白に宿るのは純粋な美であろう。そこへと向かって主体は死んでいくのである。
9mmの音楽の基礎にあるのは行き場の失った情熱が生み出す混沌であるが、それは彼らの激情によって、世界規模にまで拡大され、世界を巻き込んでいく。その混乱は、二つの方向性で解消される。一つは、その混乱をさらに混乱させていくその極限に忘我の刹那、澄んだ悪を見出すことであり、もう一つは、その混乱を根本的に消滅させることによって、すべて猥雑なものが消え去った後の美を生み出すことである。