音楽レビュー
These Monsters「...are ruining our children's lives.」
These Monstersの音楽には、広いもの、深いもの、尖ったものなどに対する、畏れ慄きを強く感じる。重厚でひずんで畳みかけるような音の束たちは、例えば世界やその外側の大きな広がりや、物事の探究の際に開かれる際限のない対象の深みや、現在の圧倒的な薄さや鋭さ、それらに対する畏れ慄きをどこまでも拡大して出来たかのように感じる。だが、音楽は意味との関係を遮断する。だから、彼らの音楽は、対象の無い畏れ慄き、それそのものに転化し、畏れ慄きそのものの内部構造・外部構造その他関係のネットワークなどを微分していくかのようだ。
だが、我々は、その畏れ慄きを対象としてだけ反省的に感得するのではない。むしろ、いつのまにかその畏れ慄きが我々自身にも移入されてくるのが分かる。彼らの音楽は対象が無いので、逆に言えばあらゆる対象と結びつきうる。個々人の抱いている、個別的な感情と何かしらの共鳴作用を起こし、例えば怒りであるとか悲しみであるとか、そういうものと同期しながらそれらの感情を変質させていく。彼らの音楽は、畏れ慄きを純化することで、却ってその畏れ慄きを膨大な文脈と接続させることを可能にした。