音楽レビュー
the band apart『quake and brook』
the band apartは、無限に分析されていく三角形を想起させる。△である。▽かもしれないが。なぜかというと、彼らの曲は基本的にAメロ、Bメロ、Cメロが循環していく構造をとっているからだ。AメロBメロCメロが三角形のそれぞれの辺である。一つの辺をなぞって曲が進行していく。メロディーの変わり目が頂点だ。そこで屈折して別のメロディー、別の辺をなぞっていき、それが循環する。たまに4つ目の旋律や間奏が入ってきて、△が▲になったりする。4つ目の要素は内部を充填するのだ。
そして、それぞれの辺を顕微鏡でのぞいてみると、一つの辺は無数の小さな三角形の直列でできていることが分かる。そのように思わせるのは、the band apartの微視的な曲の作りこみ具合、ギターの小刻みな使い方、繊細なメロディーラインによる。さて、この小さな△は、ギター、ベース、ドラムスをその頂点とするのかもしれない。さらにこの小さな三角形を顕微鏡で眺めると、その辺はまたもやさらに小さな三角形の直列で出来上がっている。このさらに小さな三角形は、人間と楽器と技術によって成り立っているのかもしれない。そしてこの分析は無限に続いていく。
the band apartの三角具合は、彼らの曲の鋭利さにも由来する。三角は角が鋭い。聴き手の耳に切り込んでくる。ABCという曲の構造、微視的な作りこみ具合、そのことによる鋭利さ、これらは、無限に分析されていく循環する三角形を想起させる。