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音楽レビュー

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FoZZtone『NEW WORLD』


 FoZZtoneは『NEW WORLD』で確かに新境地を開いた。それは、過去・現在・未来という、相互に浸透し合う世界の地平を、その厚みをもって聴き手に重量感を与える、そういう手法の確立だと思う。
 ロックというジャンルは多くの場合若者の現在、その不安とかいらだちとか、希望とか愛とか、そういうものをその鋭さにおいて提示する、という手法をとる。それは、過去という必然性や未来という可能性、そういうものを包括するにはまだ幼い精神たちの薄層から発される、非常に危うい、それ故に切実で、人の心に刺さってくる、現在的な叫びなのだ。叫びはまさに現在形として叫ばれている。それは過去に叫ばれたのでも未来に叫ばれるであろうわけでもない。今まさに叫ばれている、生きられている、その視野狭窄の中で、圧倒的な現在の豊饒さから辛うじて唯一性とか固有性をつかんでくるのだ。『カントリークラブ』のときはFoZZtoneも同様だった。
 だが、『NEW WORLD』は過去を語る。その過去に規定されている自己の必然性を受け止める。と同時に未来も語る。現在の圧倒的な薄さから、未来の可能性へと様々な企てを投げかける。それは歌詞にも現れているし、曲調にも現れている。歌詞には過去形や回想が多く現れる一方で、未来形や命令形、新しいものへと生まれ変わる欲求、そういうものが現れ、曲調はクラシカルであると同時に現代の雑多なジャンルの音楽を混ぜてその可能性を問うているようでもある。
 それゆえ、FoZZtoneは、唯一性や固有性ではなく、普遍性や可能性を歌えるようになった。もはや彼らは現在における特権的な自己を歌うわけではない。彼らはもはや過去に規定された相対的な自己に過ぎない。だがそれゆえ、そこから汲み取ってきたものをベースに、未来を多くの人間と共有する普遍的な音楽が作れるのだ。絶えず更新され、それゆえ不安で切実な現在形の若いロックから、過去も現在も未来も包括しそこに有機的な連関を見通す、成熟したロックへとFoZZtoneは変貌した。

作品名:音楽レビュー 作家名:Beamte