鏡よ鏡よ鏡さん
身体が冷たくなっている。そりゃぁ、洗面所の前でぶっ倒れていたのだから、床の冷たさが身体を冷やしてしまっている。
しかしまあ、夢オチってどうなんだ? 爆発オチじゃないだけマシだが、私としてはもっと捻って欲しいと思う。やい、鏡よ鏡。もう少しはマシなカタチで私に説教しにこいよ。
問い掛けても鏡は答えない。そりゃそうだ。所詮鏡だ。鏡が口を聞いていいのは、ファンタジーやおとぎ話くらいだ。
私はパソコン前の椅子に掛けられている服を取りにいく。そして、パソコンの横の壁に掛けられているクリップボードに目をやる。そのクリップボードに貼られている写真のうち一枚を見つめる。
ウユニ塩原。ボリビアにある大きな塩原であり、この写真は雨季の物で、一面に雨水が張っている。その上に人間が一人立っていて、まるで広い大空に二人の人間が両足を付けて立っているような、そんな不思議で神秘的な光景が写し出されている。
全く、自分は本当にロマンチストらしい。
「――そうだな。このままじゃぁ、流石にアレだよな」
そして、当面の目標が頭に浮かぶ。やっぱこれしかないだろう。
――いつか、この塩原に言ってみよう。そして、目一杯写真を撮るんだ。
その為にも、私は今日もこうして日々をやり過ごしていく。目指すのはあの塩原。目的は、空を映す鏡を見ることだ。
とりあえずは、それでいいだろう? 鏡よ鏡よ鏡さん。