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流れ星

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「うんうん。蛙ぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ!」
「蛙ぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」
 昨晩私達は顔を向かい合わせ、この日の為に早口言葉の練習をしていた。
 練習の成果が出て良かったと安堵して、私は凄く穏やかな気持ちになって、電灯に照らされた小さな妹の寒さで赤く染まる頬を見ていたら、なんだか淋しくなってきた。私は淋しく微笑みながら妹の背中に手をまわしていた。
 
 麻里だけは幸せになって欲しいと願ったよ。きっと私は自分の笑顔を失うことより、麻里の笑顔が失われることの方が怖い。
 本当に願いを叶えてくれる星の神様がいるのなら、この願いだけは聞き届けて。

「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
 私は麻里の小さな体から離れて「帰ろうか」と言って妹の手を取った。
「うん、帰る。でもお母さん怒ってるかも」
 不安そうに俯く麻里に私は息を大きく吸い込んでから言った。
「大丈夫! 私がお星様にお母さんが怒りませんようにって言っておいたから」
 陽気に言うと麻里は明るい笑顔をみせて、もう一度「帰ろう」と言って私の腕を引っ張った。

                 △△
 
 
 十三年後――私は二十七歳になり、麻里は二十歳を迎える事となった。
 私は地元で就職して、麻里は都会の方の大学に進学して一人暮らしを始めていた。
 十月下旬、ニュースではオリオン座流星群の話題で持ち切り。けれど私は結婚式の準備に明け暮れていた。
 仕事を辞めて楽になるかと思ったけど、結婚式の準備は思っていたより大変で、スケジュール帳は打ち合わせなどで埋め尽くされて、幸せだけどストレスばかりが溜まって仕方ない。
 予算をオーバーしない、質素でシンプルな結婚式でいい。でも、計算に弱い私は見積もり表と睨めっこしているだけで頭痛がしてきそうだった。
 披露宴でのビデオ撮影も必要でしょ、ダビングだってして欲しい。親戚の人は何人で、何台バスが必要なんだっけ……招待状は何枚必要なの、あの人の名前なんだっけと、次から次へと疑問と費用が増えていく。脳内で忙しく走り回る私は、深い迷路に迷い込んだ旅人気分。
 
 少しは大人になったと思っていた私だけど、晩御飯を食べながらお母さんと結婚式の話しをしていると、何故か口論になり喧嘩をしてしまった。
作品名:流れ星 作家名:桜井悠希