【第九回】ばかVSバカ
「起きるっちゃ----------------------ッ!!!;」
「い~や~だ---------------------ッ!!!;」
朝っぱらから掛け布団の引っ張り合いをしている緊那羅と京助の声が京助の部屋から聞こえる
「遅刻するっちゃよッ!!?;」
思い切り布団を引っ張りながら緊那羅が言う
「後5分ッ!!;」
負けじと布団を体に巻きつけて京助が返す
「京助の5分は5分じゃないっちゃッ!!; 起きるっちゃ-------------------ッ!!;」
足を踏ん張って緊那羅が布団を引っ張る
「ホレ~頑張れ~」
部屋の入り口からいきなり聞こえたどちらに向けられたのかわからない声援に緊那羅と京助が揃ってソチラを見た
「阿修羅?;」
布団を引っ張ったまま緊那羅が言うと阿修羅がよっと片手を挙げた
「はよさん緊那羅、竜のボン」
部屋に入ってきた阿修羅が笑いながら言った
「ばかは?」
そして鳥倶婆迦のことを聞く
「あ…ばかならハルミママさんが…」
布団の横に置かれた救急箱
「痛くない?」
ポンポン綿球で母ハルミが鳥倶婆迦の手に薬を塗っている
「うん…大丈夫…」
両手の平を出した鳥倶婆迦が小さく言った
「こんなにマメが出来るまで頑張ったのね逆上がり…聞いたわよ」
母ハルミが包帯とガーゼを手に持って言う
「だっておいちゃん…馬鹿になったんだもん…だから」
くるくる自分の手に巻かれていく包帯を見ながら鳥倶婆迦が言う
「馬鹿に? あっははは!! 面白いこというのねぇ…アナタ名前は?」
片手を巻き終えた母ハルミが鳥倶婆迦のもう片方の手にも包帯を巻き始めた
「…鳥倶婆迦…」
鳥倶婆迦が小さく答えた
「そう…鳥倶婆迦君…面白い名前ね」
テープで包帯を止めた母ハルミがにっこり笑う
「こんな可愛い馬鹿なら歓迎するわ? さぁご飯にしましょか…他に痛いところはない?」
母ハルミが救急箱を片付けながら鳥倶婆迦に聞く
「ない…」
鳥倶婆迦がボソッと答えると母ハルミが鳥倶婆迦の頭を撫でた
「おばさん頑張り屋さんは大好きだけど無理する子はあまり好きじゃないの…わかるかしら?」
そしてお面の上から鳥倶婆迦の頬を撫でた
「ね…?」
母ハルミの指が鳥倶婆迦のお面を外すと同時に鳥倶婆迦が母ハルミに抱きついた
「あらあら; おでこ赤くなってるわ;」
泣き声と共に母ハルミの何処となく呆れたような声が和室から聞こえた
作品名:【第九回】ばかVSバカ 作家名:島原あゆむ