【第九回】ばかVSバカ
「遅かったわね~…って…」
玄関から聞こえた物音を確かめに出てきた母ハルミが目を丸くした
「ただいまだっちゃ;」
緊那羅が苦笑いで言った
「母さん…飯…;」
玄関に倒れこんでいた京助が力なく言う
「んで余ってる布団あったら敷いてほしいんだよな; 竜のカミさん」
阿修羅が京助に続いて言った
「ご飯は台所と冷蔵庫に残してるわ…そして…布団ねハイハイ」
阿修羅のほうを見てふふっと笑った母ハルミが家の奥に歩いていった
「…寝る時もお面つけてんのかソイツ;」
のらりと体を起こした京助が阿修羅の背中を見て言う
「本当に寝てるんだっちゃ?;」
緊那羅が背伸びをして阿修羅の背中でたぶん寝ている鳥倶婆迦を覗き込んだ
「まぁ…コイツにもいろいろあるんよな…」
阿修羅が微笑みながら背中の鳥倶婆迦を見る
「誰にだって…イロイロあるわけさね」
少しずり落ちてきた鳥倶婆迦の体を持ち直して阿修羅が言う
「言えない事言いたくない事出来ない事…いろいろあるわけさ」
阿修羅が緊那羅の頭に手を置いてニーっと笑った
「…しっかし…ソイツ意外と根性あんだな」
京助が靴を脱ぎながら鳥倶婆迦を見て言う
「うん…凄いっちゃ」
緊那羅が笑った
「だろ? オライはコイツのそんなトコ気に入ってるんよな」
「布団準備できたわよ~? 味噌汁あっためてるから食べちゃいなさい」
阿修羅が言い終わると共に母ハルミの声が奥からした
「京助達帰ってきてるの? ハルミママ」
悠助の声も聞こえる
「さって…飯ッ!」
京助が立ち上がった
「私もさすがにお腹すいたっちゃ;」
緊那羅も靴を脱いで家に上がる
「ちゃんと手洗ってからね? 阿修羅君も一緒に行って手洗ってきなさいな」
母ハルミが京助の脱いだ靴をそろえながら阿修羅に微笑んだ
「あんがとさん竜のカミさん」
阿修羅が笑って靴を脱ぐ
「その子私が寝かせてくるから」
そう言って母ハルミが鳥倶婆迦を阿修羅の背中から抱き上げた
「よいしょ…あらあらお面つけたままなのね」
足で鳥倶婆迦の体を支えて抱き直した母ハルミが鳥倶婆迦のお面顔を見て笑う
「安心して頂戴? 外さないから」
まさに今何かを言おうとしていたかのような阿修羅の方を見て言うと母ハルミが鳥倶婆迦を抱いて奥へと歩いていった
「…さっすが…だなぁ」
阿修羅が笑いながら呟くと歩き出した
作品名:【第九回】ばかVSバカ 作家名:島原あゆむ