【第九回】ばかVSバカ
「片ッ腹痛てェ~;」
京助が片腹を押さえながら教室へと続く廊下を3馬鹿と共に歩く
「調子に乗ってやりまくるからだろが」
坂田が言う
「本当運動神経はいいんだよなぁ京助」
中島が京助の尻を叩いた
「性格もいいぞ」
京助がキュピィンポーズで言うと坂田がすかさず裏手で突っ込む
「何かいい匂いしない?」
そんな京助を無視して南が言う
「…忘れてた! 調理実習!!;」
坂田が声を上げた
「どおりで教室に戻ってくるやつ少ねぇワケだ! 家庭科室!!;」
京助が向きを変えた
「おこぼれおこぼれ!!」
南も笑いながら方向展開して駆け足を始める
「残っててくれよッ;」
中島と坂田も階段を駆け下りた
「だぁれにあげるのかしらん?」
ミヨコが阿部の肩を軽く叩いた
「え…や…別に;」
エプロンに三角巾をした阿部が慌てて背中に何かを隠した
調理実習が終わり後片付けに入っていた家庭科室に体育を終えおこぼれを授かろうとやってきた男子が班ごとに分かれていた親しい女子に声をかけている
「阿部っちゃん!!」
浜本とハルが阿部の班に近づいてきた
「何作ったんだ?」
ハルがマイハニーミヨコに聞く
「アップルパイだよ」
ミヨコがハルに残しておいたらしき切り分けられたアップルパイを差し出した
「サンキュ」
照れながらもハルが受け取ると二人の周りだけが何処となく桃色幸せオーラに包まれた
「いいねぇ…決まった相手がいるてのは…ってことで阿部ちゃん!!」
浜本が阿部を振り返る
「あげないからね」
そんな浜本に向かって阿部がキッパリといった
「…本間」
阿部に断られた浜本が本間を振り返った
「…何?」
本間がにっこり笑って言うと浜本が苦笑いを返した
「うるぁ---------------!!!!」
急ブレーキで止まった事で上履きが廊下の床と擦れる音がして京助が家庭科室の中に入ってきた
「遅いぞ~」
男子生徒が京助に続いて家庭科室内に入ってきた3馬鹿に向かって笑いながら言った
「余ってねぇ?」
坂田が一番近くの班に声をかける
「石田が食った」
一人の女子が隣の男子を指差した
「吐け」
坂田が石田というらしき男子生徒に言う
「早い者勝ち~ぃ」
石田が笑いながら言った
「くっそ~…遅かったカァ;」
南が溜息をつく
「…あげるんでしょ?」
「へっ?;」
本間が阿部に聞いた
「栄野に」
本間が阿部に小さい声で言うと阿部の顔がカッと赤くなる
「ななな…ん…ッ;」
どもりながら後ずさった阿部の手からラップに包まったアップルパイが床に落ちた
「あ…」
「三秒ルール発動!!」
アップルパイが床に落ちると同時に数人の男子が揃って【三秒ルール】を発動させ阿部の落としたアップルパイめがけて駆け寄る
「ちょ…だ…!!」
「だりゃ-----------ッ!!!!」
阿部の言葉が男子の雄叫びでかき消された
「…も~らいッ;」
数人の男子にジャージを掴まれながら京助が言う
「判定は?」
南が坂田に三秒ルール判定を聞く
「…まぁ…適応?」
坂田が適当に答えた
「ヨッシャ--------------!!」
床に倒れたまま京助が叫んだ
「後から食べようと思ってたのに」
教室に向かう廊下を歩きながら阿部が言う
「焦げてんぞ阿部~」
京助が三秒ルール適応で手に入れたアップルパイを食いながら言った
「うっさいッ!!; 黙って食えッ!!」
文句を言った京助に阿部が怒鳴る
「まぁ…結果オーライ?」
怒鳴った阿部の肩を叩いて本間が言う
「う…;」
阿部の顔が赤くなった
「うるさいなッ!!;」
そして本間に向かって怒鳴りながら阿部が教室の戸を開ける
「…阿部?」
戸をあけたのはいいが中に入らない阿部に本間が声をかけた
「どうした?」
その本間の後ろから坂田も声をかける
ヂ~…チキチキチキチキ…
という機械音らしき音が聞こえた
「何…コレ…」
阿部が小さく言うと顔を見合わせた京助と坂田が阿部の体を押しのけて教室の中を見た
「な…」
京助と坂田が同時に声を出した
「何じゃこりゃ---------------ッ!!;」
坂田の声が廊下に響いた
作品名:【第九回】ばかVSバカ 作家名:島原あゆむ