微風
そしてまた公園の芝生の上で昼食を食べ、直美はインド映画がかつての日活映画のように次々と制作され、大人気だという話を目を輝かして話した。
十分に食休みしてから直美はまたヨガのポーズをした。柔らかい日差しが当たり、直美の顔を輝かせている。やや浅黒い肌、整った目鼻、私はだんだんと直美がインド人に見えてきた。
「あ、ちょっと足首持って」と直美が言った。
「えっ、どうするの」
私は直美の足そして足首に目をやる。モデル並とはいえないがメリハリのある足だった。
「ちょっと上に上げて、そうそう、そこでそのまま持ってて」
直美が膝を伸ばして前に突きだした足首を掴んだまま、私は直美の顔を見る。真剣そうな顔をみて、これが挑発ではないだろうと感じた。だが、若い女性が足首とはいえ簡単に男に触らせるものだろうかと考える。私は男に見られていないのだろうかとさえ思ってしまう。
「ほんとうは一人で出来なくてはいけないんだけどね。腹筋が足りないからなあ」足を交替しながら直美が言った。
その言葉で自然と直美の腹部を見ることになる。そして太腿も。言葉による視線の誘導で、挑発しているのではないかと思ったが、女性は無意識にやってしまうものだろうかと考える。
公園から会社に戻る間も他愛ない話をしながら戻った。そしてごく普通に退社時間になるのだった。退社は各自仕事のきりの良いところで帰るので、直美とはたまにしか一緒に帰ることはなかった。