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てっしゅう
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novelistID. 29231
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神のいたずら 第五章 家族旅行

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優とは違うもっと自分をさらけ出せる関係に思う碧の中の隼人だった。

碧と弥生は一緒のベッドで横になって話していた。部屋の冷房は冷えるからと切ってあった。うっすらとにじむ汗も気にせずに、二人は寄り沿って仲良くしていた。

「お姉ちゃんとどこかに遊びに行ったことがあるの?碧は・・・」
「あるよ。覚えてないの?富士急ハイランドに家族で行ったよ」
「そう・・・富士急に」
そこは隼人が優と行った場所でもあった。

「思い出せないの・・・また行こう?パパの夏休みに連れて行ってもらおうよ、ねえいいでしょ?」
「じゃや、私から頼んでみるよ。河口湖辺りでバンガローに泊まるのもいいね」
「うん、楽しそう・・・そうしたいな」
「碧は達也君を誘わなくていいの?」
「達也君?・・・だって家族じゃないよ」
「恋人でしょ?一番一緒に居たいんじゃないの?」
「・・・今はそう思わない・・・彼は忙しくしているだろうから、迷惑かけたくないし」
「あら?なんだか変ね・・・キスするぐらいに積極的だったのは誰なのかしら?」
「もう・・・言わないでよ!達也君はそろそろ塾に通って勉強に力を入れるって話していたから、もうそんなに逢えないの。それに晩熟だから・・・何もしてくれないし、どうせ」
「やっぱり・・・して欲しいって思っているんだ碧は!」
「お姉ちゃんはどうなの?したいって思わないの」
「・・・はっきりと言うのね。あなたほどしたいって思わないよ。勉強のほうが大切だから、今はね。なんとしても早稲田に合格するって決めているから・・・それまでは頑張るの」
「ふ〜ん・・・早稲田か・・・公立はどこ受けるの?」
「公立?・・・東大とか?」
「東大!嘘でしょ、お姉ちゃん・・・」
「当たり前じゃないの。私学がいいの」
「ビックリした・・・話それちゃったね」
「碧は将来どこの大学に行きたいかって考えているの?」
「考えているよ。医者になりたいから、東大か慶応かな・・・」
「えっ?それって真剣にそう考えているの?」
「おかしい?」
「いや、おかしくはないけど・・・そうなの」

平気でそう言った碧に末恐ろしさを感じた。ひょっとしてそれは実現可能なことなんじゃないのかとも思えたからだ。

弥生が両親に話をして、お盆休みに家族で河口湖と富士急ハイランドへ行くことが決まった。なかなか予約が取れなかったが、何とか湖畔に近いところでロッジを借りることが出来た。出発の朝スーパーに買い物をしに立ち寄って、バーベキューのお肉や野菜、翌朝のパンや牛乳、卵などをクーラーボックスに詰め込んで、中央高速から河口湖を目指した。

隼人は気にならないと思っていたが、高速を走行しているとあの日のことが頭をよぎってきた。気分が悪くなるというのか、動悸がするというのか、汗が出てきて恐怖心が出始めてきた。

「碧・・・大丈夫?すごい汗よ・・・あなたちょっとサービスエリアで止まって」
「どうしたんだ?大丈夫か・・・」
車は一番近いサービスエリアに入って止まった。

由紀恵は心配そうに碧の汗を拭きながら緊張している様子に何かおかしいと感じた。
「ねえ、どうしたの。遠慮しないで言って」
「ゴメンなさい・・・事故のときを思い出したの・・・高速道路だったから」
「でも、碧は眠っていたから気にならなかったんじゃないの?」
「・・・トンネルの中を走ったでしょ・・・高速道路を走っていると思うだけで、思い出したの」
「そう・・・どうしましょうね、あなた。まだ先よね河口湖って。下道に降りてゆっくりと行きましょうか?」
「そうだな・・・次のインターで降りようか」
「いいのよ、パパ。我慢するから・・・あと少しでしょ?」
「そうだけど・・・大丈夫かい?本当に・・・」

弥生が席を由紀恵と代わるように言った。
「ママ、碧が怖がらないように私が傍にいて抱いているから・・・ね、それで我慢しよう」
「うん・・・ありがとう」

再び走り出した車内で碧は姉の弥生にしっかりと抱き寄せられてじっとしていた。先ほどのような不安感はなかった。くっつけている片方の耳から弥生の心臓の鼓動が聞こえる。その速さに自分の鼓動を合わせてゆくように呼吸を整えていた。

河口湖インターを出て車はバンガローのあるビレッジに着いた。早速中に入って昼ごはんのバーベキューの用意を始めた。秀之が外で薪を焚き炭を熾して鉄板を乗せた。由紀恵と弥生は肉を切ったり野菜を切ったりしている。車を降りて元気になった碧はテーブルに皿を並べ、取り皿や箸などの準備をした。

父親がビール、母親と娘二人はジュースで乾杯して、バーベキューが始まった。久しぶりに味わう雰囲気に、秀之は家族の大切さをしみじみとかみ締めていた。由紀恵と碧が病院に運ばれたと聞いてからこの日が来ることをどれだけ楽しみにしていたか・・・一人感慨にふけっていた。

「パパ?何考えているの?ママのこと?」
「碧・・・みんなのことだよ。家族っていいなあって、そう考えていたんだよ」
「そうね・・・こうして元気でいることが一番だもんね」
「大人びたことを言うのね、あなたは・・・子供っぽくないよ」弥生が茶化してくる。

「だって、本当にそう思うんだもん・・・生きてゆくために必要なのは健康だから、ねえ?ママ」
「そうよ、身体が資本ですものね。お金がいくらあってもこうして楽しめなきゃ悲しいわよね。ママはそう思うわ」
「パパもママと同じだな・・・みんなとこうしているだけで幸せなんだよ・・・それ以上は何もいらない」

「ねえ?パパとママって恋愛結婚なの?」碧は聞いた。
「そうね・・・あなた、恋愛よね?」
「そう言えばそうだな・・・」
「なんか変な答えだね・・・はっきりと言ってよ」
「話しても構わない?あなた・・・」
「そうだな。子供たちも大きくなったからこの機会に話そうか」

訳ありな言い方で父親の秀之は由紀恵にそう言った。
「実はね、パパとママは付き合っていた訳じゃなかったの」
「じゃあ、お見合いをしたの?」
「ううん、違うの碧・・・パパが付き合っていたのはママの姉なの。パパとは大学で同級生だったのよ」
「ママのお姉ちゃん・・・じゃあどうして、ママと結婚したの?」
「そうよね・・・ママは大阪にいたから会えなかったしね」

碧はこの先が読めなかった。聞いて良いことだったのかとすら思えてきた。

「パパと付き合っていた姉は病気で大学を卒業した年に死んだの・・・何度も足を東京に運んで、パパも大阪に来てくれて。そうしているうちに、お互いを慰めあっているうちに、一年ほど経ってから交際して欲しいって言われたの。考えたけど、その時のパパには自分が必要なんだって強く思ったから、結婚してくれるんだったらお付き合いしましょう、って返事したのよ」
「初めから、結婚しましょうって言ったのは何故?ママ・・・」
「ママには実家の親から勧められている見合い話があったの。それを断るということはいい加減な気持ちでは出来なかったから、そう言ったの。真剣なら・・・結婚出来ると思ったからね」
「なるほど・・・大人の事情だね・・・」
「大人の事情か・・・面白いことを言うね、碧は、ハハハ・・・」
「パパはママのお姉さんが好きだったんでしょ?ママでも良くなったの?」