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てっしゅう
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神のいたずら 第五章 家族旅行

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「碧・・・それを言われると辛いよ。死んだ人をいつまでも好きでなんかいられなかった。寂しかったのかな・・・傍にいてくれたママの事をいつしか好きになっていたんだよ」
「そういうものなの・・・好きな人は離れていてはいけないって言うことにもなるね」
「そうかな・・・碧も良くわかるようになったね」

にやっとしながら弥生は話しに割って入った。

「碧はそういうことは良くわかるのよね・・・興味が強いから・・・」
「お姉ちゃん!そういうことって何?」
「怒らない怒らない・・・でもいい話聞いたわ。パパ見直しちゃった。ママも幸せだね、パパみたいな人と結婚出来て」
「弥生、ありがとう。あなたも幸せになれる人を見つけられるといいね」
「ママ、お姉ちゃんは無理だよ。意地悪だから・・・」
「何言ってるの!あなたこそ甘えん坊の癖に・・・」
「喧嘩は止めなさい・・・まじめに話しているんだから」
「パパ!碧が悪いのよ・・・変なこと言うから」
「碧は弥生が好きなんだよ。だから言うんだよ。わかってやりなさい」
「また・・・それか・・・解ってるよ、そんな事・・・得ばっかりする奴だなあ、碧は」

火の後始末をして少し散歩した。暗くなった湖畔の風景は、心地よい夜風に誘われてたくさんのアベックがデートを楽しんでいた。

ロッジのお風呂は家族全員が入れるぐらいに余裕があった。父親の秀之はためらったが、碧に勧められてみんなで入ることを承知した。子供の頃は良くこうして娘とお風呂に入っていた。ここに来てそうするとは思わなかったが、恥ずかしさよりこうしあえる家族が最高に嬉しかった。

碧は由紀恵と弥生がバスタオルを巻いて入っているのに、何も巻かずに入ってきた。父親は少しビックリして目をそらせたが、弥生が直ぐに、「何してるの?タオル巻きなさいよ」そう言ったから、しぶしぶ小さいタオルを前に当てて入ってきた。

「あなた恥ずかしくないの?パパがいるのに・・・」
「何で?パパでしょ・・・」
「よく解らない人ね・・・」
「碧、パパが恥ずかしいから言ってるのよ。気を悪くしないでね」
「うん、ママ解ったよ」

秀之はちょっと嬉しかったが、やはり正視できないからタオルを巻いて欲しいと思った。こんなときぐらいしか出来ないから、父親の背中を碧は流してあげることにした。大きな背中をタオルでこすっていて、ふと子供の頃自分の父親にしていたことを思い出した。今また自分がこうして父親の背中を流せることが、生きている証になる。もう戻れないのならしっかりと碧として生きてゆこう・・・父の背中を見ながらそう思った。

「碧は優しくなったなあ・・・パパは嬉しいよ」
「そう・・・これからもこうしてあげるから遠慮なく言ってね。ママに嫉妬されちゃうかな?」
「何言ってるの、この子ったら・・・おませさんね」

大きな笑い声が聞こえる。
響き渡る浴室に幸せがこだまする。
小野碧、12歳
小野弥生、17歳
由紀恵と秀之のこの世で唯一の宝物であった。

「お姉ちゃんも背中流してあげる」
「いいわよ、そんなことしてくれなくても・・・」
「じゃあ・・・碧の背中流して・・・」
「めんどくさい奴だなあ・・・仕方ないな」

細くて綺麗な背中にはシミやホクロなど一切なかった。
「碧は・・・綺麗だなあ、肌が」
「ほんと?親に感謝しないといけないね」
「そうだよ・・・」

今日は、はしゃぎすぎたのか碧は早くに寝てしまった。他の三人はテレビを見ながらおやつを食べたりして話をしていた。弥生は早稲田を受験することを話した。そして、碧が東大に行くといったことも話した。

「弥生は早稲田に行って何かやりたいことがあるの?」由紀恵はそう尋ねた。
「特に無いけど・・・銀行とか商社とかに勤めたいって考えている。しっかりと仕事の出来る女性になりたいの」
「そう、立派ね・・・結婚もして欲しいけど、女だって自分の人生の設計を考えることがまず第一ね」
「うん、そう思うよ。主婦とも両立させたい。碧は医師になるって言ってたよ。なんかあの子を見ていると、怖ろしいぐらいに可能性を感じるの。ママはそう思わない?」
「碧が・・・まだあどけないって思うけど、そんな心配しなくていいのかしらね。弥生の言うとおり、しっかりしているのかも知れないね」
「そうだよ。私なんかより大人だって感じるときがあるもの」
「それは、ママも同じよ。何か考えているときなんか表情が大人に見えるから・・・」

深夜になって碧は目を覚ました。トイレに行ってから、冷蔵庫のジュースをコップに注いで飲んでいた。両親の部屋の扉が開いて由紀恵がバスタオル姿で出てきた。碧と目が合う・・・
「碧!起きちゃったの・・・」
「うん、ママどうしたの?」
「シャワーを浴びようと思って・・・汗かいたから」
「ふ〜ん、そういうことね」
「なによ、そういう事って・・・」
「別に・・・仲がいいんだねママとパパは・・・そう思っただけ」
由紀恵は恥ずかしかった。直ぐに風呂場に入った。シャワーの流れる音を聞きながら碧は二階に上がっていった。部屋で弥生はぐっすりと眠っている。起こさないようにそっと隣に寄り添った。
「何?・・・碧・・・」
「ゴメン、起こしちゃった・・・一緒に寝たい・・・」
「いいよ・・・おいで・・・」
弥生の胸に頭をくっつけて目を閉じた。