SaddenSociety
男2人が前を歩き、女2人が後ろを歩くという進み方で、どうやらこの4人は進んできたらしい。
おれは一番後ろを、影のように進む。前を歩く女が発する、
もう24時間は経過してるだろう香水の残り香が、一瞬だけ安心をくれた。
少しの音でも立てたら見つかる可能性があるから、誰もしゃべらない。
男がどこに向かっているのかを推測することが出来た。
さすがに彼らはここまでしのいで来ただけあり、頭が良く、ただ闇雲に街を彷徨ってる訳ではないようだった。
人間の一番新しい食べ残し、ゴミ、タバコの吸殻、血なんかを探しながら、
それを目印に進んでいた。
何時間か歩いただろうか、彼らと自分は、ドームについた。
外観は、東京ドームそのものだった。ただ、スケールはその1/6か、いやもっと小さいくらいで、
その中で野球かサッカーが出来るかという程だった。
恐らく教育施設。そんなことを考えてると、彼らは、十分に周りを警戒しながらも、少し口元を緩めた。
初めて見せる安堵。
少し考えて、その意味がわかった。どうやらこのドームには沢山の人間が避難している。
彼らはそれを理解したのだ。
しかし、どうやって?
ドームの壁に張り付いて、ゆっくりと進んでいく。どこの入り口も閉鎖されているが、
正面の入り口に差し掛かった途端、ゆっくりとただ扉が開いた。
彼らは急いで中に入り、おれも続いた。
男も女もみんな無事。大したグループだ。
迷彩の服を着てグラサンをかけた外国人(十中八九アメリカ人だ)が、
「ウェルカム、なんとかかんとか。」と言い、それに対して男が頷いた。
おれはさっぱり聞き取れなかったが、こいつ分かって頷いてんのか?なんて思った。
ドームの中にはざっと150-200人くらいか、の人間達が避難をしていた。
しかし、テレビのニュースなんかで良く見るような
有事に体育館の避難所で落ち着いて高齢者がくつろいでるという光景では無く、
みんな、いつでも動けるように立っていた。
おれは、思い出したように4人のグループ、特にリーダーの男に礼を言った。
男は笑う訳でもなく、手を挙げただけだった。
が、明らかに自分に対して良い印象は持っていなかったらしく、早々に群集に紛れてしまった。
腹が立ち、やるせない気持ちになってしまう。
作品名:SaddenSociety 作家名:makoto