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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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愛されたい 最終章 家族

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「えっ?こんな年なのよ。出来ないって・・・たとえ欲しくても」
「もう無くなったの?」
「そうじゃないけど、無理なのよ。46歳でおなか大きくなんかなったら恥ずかしいじゃない?」
「お父さんが欲しいって言ったらどうする?」
「そんな事言わないよ。育てるのが大変だもの」
「私が手伝うから、生んでもいいよ」
「ありがとう・・・可愛いだろうけど・・・もう三人もいるから十分よ。それより早く美咲の子供が見たいわ」
「お姉ちゃんのほうが早いんじゃないの?」
「有里のほうが・・・そうかな。そうかも知れないね」
「彼氏さん見たいわ・・・ねえどんな感じの人なの?」
「潤一くんって言うのよ。一つ上だから21歳なの」

美咲は早く潤一を見たいと思った。どんな人なんだろうかと興味が沸いてきたからだ。

風呂から出てきた横井は智子と美咲が仲良く話しているのを聞いて、声をかけてきた。
「何を話しているんだい?楽しそうじゃないか」
「お父さん、ねえお母さんと子供作ってよ!」
「はあ?何を言ってるんだ美咲。お前たちがいるじゃないか」
「お父さんとお母さんとの子供はいないよ」
「まあ、そりゃそうだが、同じようなものだよ。区別なんかしてないから」
「そんな意味じゃないの。二人の子供が欲しくないのかなあって思ったの」
「お母さんがもう少し若かったらお願いするかも知れないけど、もう無理だよ。なあ智子?」
「そうね、そう言ったのよ。無理だって」
「50で生んだ人テレビで観たよ。大丈夫じゃないの?」
「今生んだとして、あなたと同じ17歳になるときは64歳になっているのよ。有里やあなたの孫と余り変わらないんじゃ可哀そうでしょ?」
「そうかなあ・・・」

美咲は有里と高志を見て兄弟っていいなあと思っていた。自分は一人だから、弟か妹が出来たら嬉しいと考えていたのだ。智子にはそんな美咲の願いがなんとなく感じられたから、はっきりと断るのではなくやんわりと断ったのだ。横井はひょっとしてと思い智子に念を押してみた。

「智子が欲しいなら作ってもいいよ。おれだって子供は可愛いと思うから出来れば欲しいよ」
「行雄さん・・・簡単に言わないで。身体も大変だけど、育てることはもっと大変なのよ」
「そうだな。そういうことだ、美咲。諦めろ」
「残念だなあ・・・高志さんと結婚しても、お姉さん仲良くしてくれるかなあ?」
「どうして?何故そう思うの?」
「だって、あんなに仲の良い弟を私が奪うって感じられたらって思ったの」
「そんな事気にしているの?有里はそんな子じゃないよ。あなたの事妹のように思っているから大丈夫よ。むしろ高志と一緒になること喜んでくれると思うよ」
「ほんとう?だったら嬉しいけど」

「美咲、お母さんの言うとおりだよ。お父さんだってそう思うから」
「うん、ありがとう。私眠くなったから寝るね・・・朝まで起きないから、仲良くしててもいいよ」
「ませたこと言うなあ・・・ゆっくり休めよ」

エキストラベッドで美咲は眠ってしまった。窓から入る月の光は部屋の電気を消しても二人の顔が十分に確認出来るほど明るかった。美咲の寝ている反対側の窓際のベッドに横井と智子は腰を下ろして抱き合うように座っていた。

「なあ、智子。これで本当に良かったのかなあ・・・」
「どうして?」
「なんだか怖いんだよ。幸せすぎると思わないか?」
「そうね、初めてあなたと出逢った時から、一年とちょっとなのよね。あっという間だった気がする。いろんなことがあり過ぎて、何年も経っているように感じるけど、まだ一年なのよね」
「そう、初めてドライブに行ったときのこと覚えているだろう。絶対に深い付き合いはしないって言い張っていた智子が、自分から好きなようにして、って言ってくれただろう?」
「覚えているわよ。あなたが・・・泣いたから」
「そうだったな、思い出すと恥ずかしいよ。その時から絶対に幸せになろうって自分に言い聞かせてきた。これからは、美咲の幸せを考えてやらないといけないって思う。高志くんとずっと仲良く付き合って結婚して欲しい。有里さんも今の彼と結婚できたらいいって思っているよ」
「ありがとう・・・考えてみたら美咲ちゃんがあなたの子供で良かったかも知れない」
「どうして?」
「二人で見守ってやれるもの・・・高志と万が一ダメになったとしても私が支えてあげれるし、ずっと傍に居てあげられるからよ」
「母親なんだものな。美咲は香里のことずっと信じてきたのに裏切られたショックで本当は耐えられない悲しみを心に刻み込まれるところだった。智子が居てくれたからこそこうしていられる今があるんだ。本当に嬉しいよ。俺一人だったら持ち堪えられなかっただろうから」
「そうね、そうなっていたら高志ともどうなっていたか解らなかったわね。美咲ちゃんが素直でいい子で本当に嬉しい。高志の子供を生んでくれたら・・・どんな風に思うんだろう?私って」
「目に入れても痛くないって言うからね・・・まだ先だけど、大きな楽しみがあるね。俺たちが子供を作らなくても、直ぐに孫が出来るよ。そんな気がする」
「うん、あなたの子供が生めなくてごめんね」
「何言ってるんだ・・・俺こそ生ませてやれなくて、ゴメンだよ」

見つめる目と目がもうこれ以上の言葉を必要としなくなっていた。目を閉じて月明かりに照らされた智子の顔は怪しいほどに美しく横井には感じられた。
「智子・・・好きだ」「行雄さん・・・わたしも」

美咲に気付かれないように、静かに抱き合った。

翌朝目が覚めた美咲は、父と智子が同じベッドで抱き合って寝ているのを見た。ちょっと恥ずかしい思いに駆られたが、気付かないように二人が起きるまで、横を向いて寝ている振りをしていた。

「行雄さん・・・美咲ちゃんに見られるの嫌だから、先に起きるわよ」
「うん?まだ早いじゃないか」
「あなたは寝てていいのよ」
「そうかい・・・じゃあ」

静かにベッドから出て、下着を着けた。昨日は美咲が居たので最後まではしなかったけど、裸になって抱き合っていた。下着の上からホテルのバスローブをまとって、空いているベッドの方に腰掛けた。美咲が振り向いてにこっと笑った。

「お母さん、仲良くしてたのね」
「イヤだ!見てたの?」
「ううん、今起きてそう感じたから」
「そう・・・恥ずかしいわ、あなたにそう言われると・・・」
「可愛いのね・・・お父さんが好きになるのが解る」
「言ってくれるね。いい年してるのに、変だと思わない?」
「思わないよ。前から聞きたかったけど、お父さんの何処が好きになったの?」
「ええ?そうね、全部よ」
「ちゃんと答えて!」
「答えてるわよ。外見も中身もって言うこと」
「ふ〜ん、確かに見てくれはいいわよね、手前味噌だけど・・・」
「可哀そうな言い方ね。お父さん素敵だって思っているでしょう?美咲だって」
「男親だからね、何かと優しいけど、なんか優柔不断なところがあるんだよね・・・感じない?」
「よく見てるのね・・・ちょっとそういうところがあるかも知れないね」
「じゃあやっぱり外見が好きになったんだ」
「違うって・・・優しいからよ」
「ベッドで?」
「・・・」
「ゴメンなさい・・・気を悪くしないで」