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天国へのパズル 閑話休題 - tempo:adagio -

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 一番変わっていたのはメイだ。普段は地味な服装だが、今日は太腿も露なミニスカートを履いている。大きめのナイロンジャケットを羽織っているものの、スカートの下にはチュチュスカートを履いているので、まるでバレエダンサーの様だ。メイもまたヨリと同じように戸惑った顔をしていて、カミラと目が合うと顔を真っ赤にして俯いた。オリバーは笑った。

「派手に遊ぶなよ。俺が黄に恨まれる。」
「しないわよ。寧ろとんでもない爺馬鹿なんだから、可愛い格好してるって分かったら喜ぶんじゃない?」

 アンジェラの言わんとしている事が、カミラには痛いほど分かった。アンジェラやカミラとは違う未来が彼女達にはある。それを拘束する権利は誰も持っていない。
 何も残せないと言われても、死にたくない。生きている感覚を求めて、誰もが願う。恋をしたい。愛されたい。そして、自分の望む場所と思い描く形を求めていく。
 その答えは、それぞれが勝手に探せばいい。他人に説教をするのが嫌いなカミラは、アンジェラを諭すように声を掛けた。

「アンジェラ、この子やメイにはいい事だけれど、おせっかいは程ほどにね。」
「分かってる。でもここにいる馬鹿含めて、これ位やんなきゃ皆現実を見やしないわ。さあ野郎共、荷物置いたら帰るわよ。」
「は、はい。」
「何処にだ。このど腐れビッチ。」
「文句は聞かない。あったとしても、今着ているあんたの服はうちのお嬢様の支払いだ!そりゃもう、モールのセンター街にジャージ姿で現れたお前が悪い!」
「こっちの話聞け、馬鹿女!」
「カミラ、また来るから。さーて、今日のお酒も楽しそうだぞー。」

 アンジェラは連れてきた2人を置いて、爽快な顔をして出て行く。
 セレクトショップやブランドショップの紙袋を置き、ルカはアンジェラを追いかけていった。メイはオリバーとカミラに一礼して飛び出していく。
 まるで嵐の様だ。2人は噴き出した。

「騒がしい調子で邪魔したな。」
「ええ、またね。」

 オリバーを送り出し、カミラは玄関の内鍵を閉めた。明日から天気が崩れるのか、足の関節が痛んで今日は義足を付けていなかった。邪魔なので動かそうと玄関横に置かれた紙袋を見ると、ヨリが全てを1人で持ってカミラを待っている。

「部屋、何処ですか?」
「案内するわ。義足をつけてからだけど、いい?」

 頷くと、袋で動きづらいながらもカミラの部屋の扉を開けた。
 イデアと言っても、人の機微を悟れぬ子ではない。これからが楽しみで、カミラは笑った。