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住めば都 ~整形外科病棟~

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6.血栓予防



 前回の手術から24年。あの時と大きく違うのは「血栓予防」ということを前面に出していることだった。
どんな風に予防しているかというと、手術当日、病室に戻ってすぐ両足を刺激する器械をつけることと、次の日の朝、血栓予防のためのキツい靴下を履くのだと説明してくれた。

「手術の後は血の巡りをよくするために、こういう靴下を履きます。ご存知ですか」
とその靴下を見せてくれた。
「はい、知ってます。キツク締め付けるやつで、値段は高いですよね」
「ハハハ、高いですね」
と言いながらふくらはぎの周りを測りサイズを決めた。
そう、最近むくみとりや疲れ予防に薬局などで売っているかなりしまりのあるあの靴下とよく似ている。
私も数年前から親しい靴屋のおじさんに進められて冬場に履いている。血行も良くなって冷え症の私でも足先が冷たくならない。冬場はとても重宝している。
しかし、夏場は暑すぎてとても履く気にはならない。その靴下をこんな真夏に履くというのだ。内心、『エ〜〜〜〜』と思った。

 手術のリスクについて尋ねた時にも、森田医師は言った。感染症の次に血栓が肺に飛ぶことが怖いと。
血栓予防にとても神経を使っているのが分かる。いつの頃からなんだろうか。24年前にはなかった処置だ。

 その予防法として、靴下のほかに、手術後、病室に帰って来たときから、足に付けられているものがある。
しかし、これは靴下のように10日間も履かず、次の日の朝まで付けるだけだったが、それでも鬱陶しかった。

 カタン、プシュー……カタン、プシュー……と足につけられた機械は規則正しく動き続ける。足の裏を空気でプッシュされるように感じた。麻酔でまどろんでいたために、どんな器械なのかはっきり見ることができなかった。