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住めば都 ~整形外科病棟~

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カーテンの向こうから聞こえるそれらの声を聞きながら、考えた。
(やっぱり、手術はやめよう。ペインの注射でだんだん痛みもひいてきたし、このまま注射を続けていると時間はかかるやろうけど、仕事もできるようになるやろ。友達の滝田さんも言ってたやん、『痛みは畳の目、ひと目ずつぐらいしか良くならないけど、気長に気長にね。そのうち治ってくるから…』と言ってくれたし。その通り、少しずつ少しずつ良くなってきてるのだから…)
毛布を被りながら、『明日、手術はやめます』って言ってみようと決意して眠りに付いたのだった。

しかし、翌日話を聞いていると、木村さんは手術をしたのではなくて、絶対安静にしていたら改善するかも知れないからと、じっと寝ているだけだったのだ。
少し体をずらす度に、ヘルニアが神経に触って痛いらしいのだ。
そうなんだ、手術した後の痛さじゃなかったのだ……。
この木村さん、1週間ほど絶対安静、おしっこも導尿して、ご飯も寝ていても食べられるようにおにぎりだった。入院しているからこそ絶対安静が保てるのだ。家に居ての絶対安静とは大きく違う。しかも主婦だからどうしても家族のために動いてしまう。木村さんは入院して正解だった。
そして、1週間後、木村さんはスタスタと歩けるようになり、今回は検査も注射も何にも処置せずにめでたく退院していった。

じゃ、同じヘルニアでも、絶対安静の木村さんと手術をしたほうが治りは早いよという自分にはどういう違いがあったのだろうと考えると、ますます不安になってきた。