Reborn
「一度自分を破壊する必要がある。でもね、それじゃやばいってことに気付く必要もあるんだ。シロップは一度自分を否定するための音楽だ。でもそれは否定のための否定じゃなくて、一度粉々になった自分を再構築するための否定だ。聡君は今自分を否定しているかもしれないけど、いつか「これじゃいかん」と思うようになる。そのときのために今シロップを聴いてるんだ。」
「何か俺は否定のための否定で終わりそうだなあ。」
「いやそれはやばいんだ。俺はこの半年そうだった。毎日のように何かにつけて涙を流してた。だがそんなものは卒業した。どこかで甘えてたんだよ。自分の傷に甘えてた。俺にとっちゃシロップはもう懐メロでしかない。三十代になって、たまに聴き返して、俺の青春こんなんだったなあって懐かしむ、そういう音楽だ。」
「そうか。でも、雄太が元気になったのは嬉しいよ。素直に。」
「でも俺は聡君を泥沼に陥れた感じがあるな。結局は弁証法だよ。破壊してまた作り直すんだ。」
昼時になって難波ラーメンは混んできた。難波ラーメンは安いのにおいしい。この値段でここまでチャーシュー載せていいのかってくらいに、チャーシュー麺は安くて食べ応えがある。友人は、もう冷えたであろうスープを、それでもレンゲで少しずつ口に運んでいた。友人の表情から私は何を読みとったらよいのか分からなかった。私は今どんな表情をしているだろう。私の表情から友人は何を読み取っているのだろう。