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遠い記憶

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 昔の川崎競輪場には、中に池のある巨大な鳥かごがあった。その中には何種類かの鳥が飼われていた。今思い出せるのは、オシドリとキジである。その鳥たちは色が鮮やかだった。私が五歳のころは、三歳下の妹も、一緒に競輪場へ行き、夕方近くまで競輪場の中で遊んでいた。しかし、何をして遊んでいたのか、そこで何を食べたのか、まるで記憶がない。私はよく、アスファルトの上に、蝋石で絵を描いていたような気がするのだが。
 小学生になったころ、私は近所に住んでいた画家に絵を習った。そのせいか、小学校の一年生のとき、学校の先生に絵の天才だと云われたらしい。高校生のレベルだと云われたようだ。同級生たちも、そう云っていたような気がする。児童画のコンクールで賞をもらったことがあり、デパートへ親と一緒に、受賞作の展示を見に行ったこともあったような気がする。賞品をもらった筈だが、何をもらったのかは記憶にない。
 近所の子供たちと、かくれんぼや缶蹴りなどをしたこともあったような気がするが、参加しないで傍観していたような気もする。家から三十分以上歩いて横浜の三つ池公園へ、クチボソ釣りに行き、釣った小魚を飼っていたような気もする。金魚をたくさん買って来たり、ひよこやちいさな亀を買って来たこともある。トンボや蝉を取りに行ったこともある。
 夏祭りのときは山車を牽いた記憶が微かにある。休憩所ですいかを食べたり、氷が入ったいちごシロップの飲み物を飲んだ。節分には神社へ行き、まかれたお菓子を取りに行った。
作品名:遠い記憶 作家名:マナーモード