鳥葬(チョウソウ)
しかし、ロボット達はそんな薄情な、滅び去った"主"達をも偲び、地球上の限られた場所でその暮らしぶりを模倣し続けている……。
村の衆が去った後に残された<アトム>は……。
見よ、今その回りには、異形のモノ、いや壊れかけた旧世代のロボット(自己修復を禁止される以前の旧型ロボット)が続々と集まってきたのだ。
彼らにはココロと呼べるシステムは無い。
ただ与えられたオペレーションを遂行する事と、その為に自己をベストな状態にメンテナンスしようとする命令に従って行動しているだけなのだ。
彼らは自分より進んだテクノロジーを持つ機体から使えるパーツを探そうと、みるみる<アトム>を解体していった。
オールハンドメイドで殆どがワンオフパーツで構成された<アトム>からは、旧世代の機体に適合する部品は、臀部のマシンガンと僅かな部品以外、殆ど得られなかった様だ。
が、とにかくバラバラにされたパーツは奇麗に持ち去られ、亡骸と呼べるモノはもう残っていなかった。
"鳥葬"は終わった……。
古代のインドやチベットには、鳥をはじめとする自然の力に"亡くなった者"の身と魂を委ねる"鳥葬"という習慣があったという。
ロボット達は滅び去った人類の記憶に重ね、機能を停止した仲間へのこうした処置を"鳥葬"と呼んでいたのだった。
もしかするとそれは、同じように消え去る運命の"旧世代ロボット"達への憐憫の情であったのかも知れない……。
- 終劇 -
03.04.02