カナダの自然に魅せられて ~トロントへ~
次のバスを待つのかと思ったら、美月は歩きながら考えなたのか、さっきのバス停とは違う方向に向かっていた。
着いたところは大きなバスディーポ。ふうん、今度は普通のバスで行くのね。
往復切符を買い、あ、違った…美月に買ってもらって、ナイアガラ行きの列に並んだ。
バスのボディにはグレイハウンドと書いてあった。長距離のバス会社のようだ。
ナイアガラまではバスで2時間ぐらい。電車もあるが、これは本数が少ないようなのでやっぱりバスで行く人が多い。
長い列だった。ボーっと待った。蒸し暑かった。あまりにも人が多いので、バスの臨時便が出るようだった。さすが、有名なナイアガラ滝だけあって、目指す観光客も多い。
自転車を持ち込もうとしている人もいる。
ずーっと、海かと思うような大きな湖、オンタリオ湖の周りを回ってバスは走った。車に揺られるとすぐ眠くなる癖のある私はまた眠ったようだ。
「着いたよ」
と促されて目が覚めたが、
「ん?」
どこに滝があるの?なんにもない。
VIA鉄道と書いた駅がすぐそこに見えた。「ナイアガラフォールズ駅」と書いてある。
「ここから、もう一回バスに乗るんだって」
フォールズ・シャトルというバスに乗って10分ぐらいで着いた。途中、川よりもかなり高いところにある橋が見えた。
これがレインボーブリッジだ。これを渡り切ったそこはもうアメリカ・ニューヨーク州なんだ。
バスを降りて道路を渡ると、そこは手入れの行き届いた広々とした公園だった。
「どこに、滝があるの???」
大きな音は聞こえるのに、滝が見えない…。
小さな展望台があったのでそこから覗いてみた。
「見えた!!すご〜い!!」
ナイアガラ・フォールズは轟音とともにすさまじい水煙をあげて流れ落ちていた。
まったく規模が違う!!今まで見てきた日本の滝の何百倍もの滝の幅、水の量。
それに、今までの滝は、滝つぼの近くから滝を見上げるという形が多かったのに、ここは、なんと下に見るのだ。それが不思議だった。
エリー湖から流れ落ちる水面が私たちの立っている位置と同じくらいで、溢れるように落ちた水がその下のオンタリオ湖に流れていく。その落差は50〜60メートルぐらいか。
それに、山からではなく湖から流れ出ているから視界が明るく広々としているのだ。だからさらに雄大に見えるのだった。
その昔、氷河が削り取った断層を流れているらしい。だから、川の両岸は、アメリカ側もカナダ側もほぼ絶壁に近い。
そんな急な流れに逆らうように、一隻の小さな船がゆらゆらと滝に向かって進んでい行くのが見えた。満杯の人を乗せて。
「あ〜、あれが『霧の乙女号』やね」
ナイアガラの滝は大きく2つに分かれていた。予備知識ゼロで行ったから、それにもビックリした。
ほぼまっすぐで、滝つぼのあたりにゴツゴツした岩が重なっている滝がアメリカ滝。
その隣に細長い流れもある。この細長い滝には『ブライダルベール滝』というおしゃれな名前がついていた。
右側の大きい滝がカナダ滝。大きくUの字のカーブを描いていて水のカーテンがひらめいているようだった。
しばらくその光景に見入っていたが、急がなくっちゃ、時間通りに帰れなくなると思った私たちは、霧の乙女号の乗り場に向かった。
作品名:カナダの自然に魅せられて ~トロントへ~ 作家名:ねむり姫