カナダの自然に魅せられて ~トロントへ~
最終章 いよいよ帰国
幸せなことに復路は関空着だ。
疲れた体に鞭打って、重い荷物をガラガラ引っ張りながら成田乗換えなんてしたくないからね。
飛行機の窓から何度下をのぞいても、見えるのは白い雲か海ばかり…。
やっと飛行機の窓から陸地が見えてきた!
「やった〜!あれはどこかなあ?そうだ、紀伊半島だ」
紀伊半島まで来たのだ、もうすぐ関空に着くぞ、ワクワク。
まもなく見えてきたのが、紀淡海峡に浮かぶ友が島、そして沼島(ぬしま)。
さらに、母が住んでいる淡路島が大きく見えてきた。
故郷の淡路島上空を大きく旋回したのち、関空への着陸態勢に入った。
お盆間近の大阪湾の水面は、真夏の午後の波がやんわりと揺れ、その上にタンカーや貨物船が浮かんでいるのが見える。
大きな船と船の間には小さな漁船がポツン、ポツンと浮かんでいた。
やっと帰ってきた。
日本語のアナウンスが流れてきた。
「あらっ、UAなのに日本語でアナウンスしてるよ」
「ほんまやね。サンフランシスコに着陸のときは英語だったのにね」
「日本に着陸するときは日本語なんやね」
私たち二人は飛行機の中で懐かしい日本語を耳にして、なんだかホッとした。
飛行機から降りると、やっぱり日本は蒸し暑い。しかも午後。気だるいのも懐かしい。
快適な8月のカナダの気候を懐かしみながらも、やっぱり私たちは日本人。この蒸し暑さと仲良くして暮らしてきたし、これからも「暑いなあ!!」といいながら暮らしていくのだろう。
姉はここから船で神戸空港まで行く。私はリムジンバスでJR尼崎駅へ。ここでお別れだ。
「お盆には淡路に帰るでしょう?」
「そのときに母さんのためにお土産と写真を持っていくね」
「うん。じゃあ、また淡路でね」
「うん。バイバイ」
作品名:カナダの自然に魅せられて ~トロントへ~ 作家名:ねむり姫