カナダの自然に魅せられて ~トロントへ~
33、再びバンクーバーへ
[第二段階の目当て 最終の宿泊地となるホテルに無事到着すること]
ホテルでも今までずっと美月にまかせっきりにしてたのに、自分たちだけでチェックインできるのだろうか…。とても不安だった。
飛行機から降りて出口に向かった。
サンフランシスコから降り立った時、バンクーバーの表玄関は伝統豊かな工芸や木彫りの船やタペストリー、それに、緑豊かで水も豊かなカナダを表現するように、本物の水を流して滝を表現していた。
わあ〜カナダに来たんだ!!という感動いっぱいでキョロキョロしたが、あの時、写真を撮るのを忘れてしまっていた。
そこで、今度は絶対忘れないで撮るんだと強く思っていたのに……なかった。
国際線と国内線の乗客を迎えるゲートは違っていて、飾りも違ったものだったのだ。
国内線のバンクーバー到着ロビーに行く通路には、木彫りのお面や置物を天井から吊るし、床には大きな丸太1本をくりぬいて作ったカヌー、それにトーテムポールが立っていた。
そのどれもが原色の色で飾られていた。
日本の国内線ロビーにはそんなに凝った飾りがあるところってないよね。
いやいや、カルガリー空港もトロント空港も気がつかなかったから、バンクーバーだけかも知れない。オリンピックが半年前にあったばかりだからかな?
それらの工芸品が、大胆に広い面積を占めていたので、とても目立ったし、印象深かった。
今日の宿のビジネスホテルは、明日の出発が早いこともあって、美月は空港に一番近いホテルを予約してくれていた。
さて、そのホテルにどうやって行くかが問題だ。
荷物を受け取り外へ出た。
外は薄暗い。シャトルバスのバス停でホテル行きのバスを待った。しかし、一向にバスはやってこない。
何度も、ここで待っていていいのかを確かめた。インフォメーションで聞いたり、ガードマンのおじさんに聞いたり…。
でも、来ない。来るのは他の高級ホテル行きのバスばかり。そのバスは何度も来ているのに…。
ホテルに早く荷物を置いて、空港からスカイトレインに乗ってダウンタウンに行く。そして食事をしてお土産も見ようと、飛行機の中で暢気に話していたけれど、この待ち時間でそれは望み薄になった。
そして、その「小さな冒険」にも待ったをかけることがもう一つあったのだった。
かなり待って、やっと私たちのホテルも回ってくれるシャトルバスがやってきた。ホテル専用のバスではなくて、小さなホテルを掛け持ちして回るバスだった。
そのバスに乗ったのは、私たち二人と家族連れ、そしてある航空会社のクルーたちだった。
パイロットとキャビンアテンダントは仕事から離れたからか寛いでいて、大きな声で話し、大きな声で笑っていた。彼らの制服姿はかっこよかったが、もう少し、小さな声で話して欲しかったなあ。
シャトルバスは、まず最初に制服の彼らを降ろし、ついで、家族連れ、最後が私たちだった。
ホテルを三ケ所も回ったから、遠回りもしただろうが、空港からホテルに着くまでの間にお店らしきものは何もなく、畑さえなく、ただ広々した空き地があるだけだった。
これでは、一旦荷物をホテルに置いて、それからダウンタウンへだなんて無謀な計画だと知らされた。
交通手段がタクシーしかないような…こんな遠距離をタクシーで往復なんてできない。
これで、「小さな冒険」の計画はおじゃんになってしまった。
作品名:カナダの自然に魅せられて ~トロントへ~ 作家名:ねむり姫