カナダの自然に魅せられて ~トロントへ~
飛行機の座席に落ち着いた。
横の座席には体の大きな男性が窮屈そうに座っていた。
通路を挟んで座っていたその男性の友達が、私と席を交換して欲しいと言ってきたが、
「いいえ、隣の姉と一緒ですから」
とたどたどしい英語で言うと、納得してくれた。
その男性たちは、通路を挟んで大きな声で話しながらビールやナッツを注文してグイグイ飲んでいた。
二本目も注文していた。
豪快な飲みっぷりを見ていると、お腹が空いていたのを思い出した。
この先4時間も何も食べずに乗っているのは苦しい〜。
え〜い、私も注文しよう!!
カタログからサンドイッチを探してオーダーした。
飛行機の中はすべてカードでの支払いになる。
カードはあまり使いたくないといつも思っているのだが、この際、仕方がない。
飛行機の中で買い物をしたのは初めてだったが、何とか成功。
ホッとして、サンドイッチにかぶりついた。
お腹も満たされ、一息ついて……
アッ……!!
緊張の連続だったから、忘れていたことさえ分からなかった。
「ねえ、お姉ちゃん、キプリング駅で赤いチケット取らずに出て、バス停まで走ったやんか。Oさんが赤いチケットと取ってくださいねっ言ってたのに…。
バスの運転手さんも何にも言わへんかったけど、私たちも何にも言わずに乗って降りたね。あの時、料金のことちっとも頭に浮かべへんかったわ。
このバスでいいんやろか、どこで降りるんやろかって心配してたから。あれで大丈夫だったんかな。運転手さん、私たちのこと地下鉄からの乗換えやってわかったんかなあ?」
「ホンマやね。何も言われへんかったね」
どこまでも暢気な二人だが、カナダも大らかな国だ。
飛行機は順調に空を飛び続けた。
最初は湖の連続だからと、私は小説を読んでいたが、お腹も落ち着いたので、いつの間にか眠ってしまっていた。
あの感動の連続だったカナディアンロッキーを空から眺めたいと思っていたので、時々目を覚ましては窓の下を覗いた。
随分経ってから、険しい高い山が連続して見えてきた。
いよいよロッキー越えだ。
頂上には雪を抱いている。
てっぺんが真っ白の平原のようになっているところもあった。
きっと、あれが氷河だろうな。名前は分からないけれど。
雪上車で行ったあのアサバスカ氷河を思い出しながら、あのコロンビア大氷原を空から見てみたいなあ。アサバスカ氷河がその一部だとしたら、全体でどれぐらい広いんだろうなあ、その大きさをこの目で確かめてみたいと思った。
飛行機はあっという間にロッキーを越えてしまった。VIA鉄道で17時間もかかったというのに!
ロッキー越えをすると、バンクーバー空港はすぐだった。
見覚えのあるスタンレーパークも眼下に見えてきた。
作品名:カナダの自然に魅せられて ~トロントへ~ 作家名:ねむり姫