カナダの自然に魅せられて ~トロントへ~
28、娘とデート
娘に出会った安心感で、急におなかが空いてきた。
部屋の鍵は美月が持っているから帰ってくるまでは入れない。
「どこかいいとこ知ってる?きのうはこの通りの向こうのレストランだったんだけど」
「うん、ゼミの先生が、海老のおいしい店があるって教えてくれたからそこに行こう」
と、美優は先生から教えてもらった店の地図を出した。
(わあ〜、ちゃんと調べてきてくれてたんや!!)
その店に向かって歩いた。
通りと番地を確認したが、そこは普通の民家のようで、レストランのようにはなっていない。
「あれ?確かここのはずやのにな。おかしいね」
「レストランと違うね。じゃ、いいやん。どこでも。いいなと思ったところに入ろう」
「そうしよう」
大学の南のカレッジストリートにはお店がたくさん並んでいた。
カナダのレストランはほとんどがお店の前にテーブルを並べ、外でも食べられるようにしてあった。テラス風と言うのだろうか。そして、夏だからか、中より外で食べている人が多かった。
私たちは1軒の店を選んで入った。
中は空いていた。レストランと言うより、カナダ風居酒屋といった感じだった。
「お母さんはのどが渇いたからビール頼んでいい?美優は?」
「私はジュース」
先に飲み物を注文してからメニューを見た。
当たり前だがすべて英語とフランス語。どんなものかわからない。わからないので、写真が載っているものにした。
「あ、これ、海老のチリソースみたいやね。これにする?」
「そうやね、おいしそうや」
それに、キャベツにバジルとフレンチドレッシングをかけたサラダと、フライドポテト。
注文している美優は、11日前にカナダに来たとは思えないほど、会話ができていた。
ボーイさんの話すことも理解できていた。
「すごいねえ。もうちゃんとしゃべれるんや!!びっくりしたわ」
「へへ、すごいやろ。簡単なことならしゃべれるようになったわ」
英語と数学が大嫌いだった娘とは思えなかった。若いと言うことはどんどん吸収できるんだなあ。
作品名:カナダの自然に魅せられて ~トロントへ~ 作家名:ねむり姫