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灰色蝶にウロボロス

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 現代でもあれほどはっきりと限野の存在には気付いたのだから、より深い繋がりがあったであろう過去ならばもっとはっきりと分かる気がしたのに。
 まだ私が限野と共有した光景を思い出していないだけなのか。
 さて、私にとって唯一の前世への道しるべとなり得る限野という人間はどこまで信じていいのだろう。
 根本的に信頼はおけるけれど、その言動を全て頭から信じるというのは実は抵抗があったりする。限野は絶対平気で嘘を吐くタイプだ。呼吸と嘘は同義で、人を騙すことに罪悪感など欠片もなく、自分が楽しむためならいくらでも嘘を吐くような人間。
 我ながら酷いことを考えているとは思ったけれど、恐らくそれは疑いようもなく正解だ。限野がどういう人間性かは、入学式の日に出会った当初から、直感的に理解していたから。
 けど今の私は限野を信じるしかない。
 この中途半端に思い出してしまった今の状況を打破するには。
 限野の口から出た言葉が嘘でも本当でも、限野といれば私は思い出す。これもまたかなり最初の頃に得た確信だ。
 思い出したから何が変わるとか考えているわけではないけれど、目の前にヒントがちらついているのに無視することはできない。知らないことを知らないまま放置しておける質ではない。知らないことを知らずにはいられない。私はそういう人間だ。恐らくは一宮棗として生を受けるよりもずっと前から。
作品名:灰色蝶にウロボロス 作家名:初瀬 泉