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漢字一文字の旅  第一巻(第1編より第18編)

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十二の四  【羅】


【羅】とは、鳥や小動物などを捕獲するための網のこととか。
そして、その字の前に、衣がひるがえる様を意味する「娑」が付いて『娑羅』(さら、しゃら)となる。

祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり

娑羅双樹(しやらそうじゆ)の花の色
盛者必衰の理(ことわり)をあらわす

おごれる人も久しからず
ただ春の夜の夢のごとし
たけき者もついには滅びぬ
偏(ひとえ)に風の前の塵に同じ

これは平家物語の冒頭の言葉。
この意味を簡単に解釈すれば、祇園精舎の鐘の音には、永遠に続くものはないという響きがある。
娑羅双樹(しゃらそうじゅ)の花の色は、それを表してる。
春の夢のようなものであり、栄えた者も塵のように滅びていく。

この文中に、娑羅双樹の花の色は盛者必衰の理をあらわすとある。
ならばどのような花で、どんな色なのだろうか。
それは夏椿に似ているが、別種。

娑羅双樹の花、京都妙心寺(みようしんじ)の東林院(とうりんいん)で、毎年六月に公開される。梅雨時に咲き、一日で散っていく儚い白い花なのだ。
庭園の緑の苔に、白い花がはらはらと落ちているさま、生滅流転の儚さを充分醸(かも)し出す。

【羅】は、『娑羅双樹』の花の色となり、それはまさに盛者必衰の理を思い至らせてくれる。