漢字一文字の旅 第一巻(第1編より第18編)
十二の二 【曜】
【曜】は、元々日光が輝く意味。
だが、一週間は七曜星となる。
日曜日は太陽が輝き、月曜日は月が輝く日。
ならば土曜日は?
土星が輝く土曜日。ちょっと暗すぎないか?
天体写真で冠をかぶった土星、もうちょっと光れよと言いたくなる。
そんな【曜】、国宝に「曜変天目茶碗(ようへんてんもくちやわん)」がある。
漆黒の釉面に結晶による斑紋が群をなし、瑠璃(るり)色の美しい光彩を放ち、妖しく光り輝く。
こんな深い青の輝きを曜変させる茶碗、世界に三つしかなく、いずれもが日本にある。
そんな希少な茶碗、秀吉が信長に献上しようと思っていたが、家康が調子に乗って、どうもガッチャンと割ってしまったようだ。
それ以来のことだ。秀吉と家康の仲が悪くなったのは…、と裏伝説となっている。
こんな「曜変天目茶碗」、とにかく茶碗の突然変異。
過去に陶芸家が幾度となく再現しようと挑戦してきたが、未だ完成していない。
しかし、この妖しく青く輝く【曜】、人を虜(とりこ)にし、多くのロマンを生んできたのだ。
作品名:漢字一文字の旅 第一巻(第1編より第18編) 作家名:鮎風 遊