Heart of glass
「っていうか、なんで俺が内部生やて解ったん?」
先ほど硝が驚いたのはそこにある。硝が内部生だと解らなければ、近道なんて聞くだけ無駄だ。しかしあの言葉はひとり言なんてことはなく、確実に硝に対して投げかけられたものだった。つまり、彼は硝が内部生だと確信をもったうえで尋ねたことになる。
そんな硝の感心も露知らず、平然と彼は答えて見せた。
「初めは外部生かと思ったけどな」
足はまったく遅くならなかったが、質問への返事はくれた。
「ところが教師がお前の頭を叩いた時点で、一度は顔を合わせていると知った。初顔合わせで生徒の頭なんて叩かねぇだろ。そこで外部の推薦入試か、もしくは内部生であることが分かった。推薦入試の生徒は入学前に顔合わせがあるって聞いたしな。それなら外部でも教師と顔を合わせていてもおかしくない。お前の性格なら、それだけでもうちとけることは可能だろうしな」
彼は勢いよく楓の回廊に飛び出した。硝も後に続く。
「で、内部である保証ってのはどこなん?」
「まずは俺が条件を持ち出したあの時。入学からたった五日、しかもその五日間はずっと俺に付きまとってただろう?それなのにあの時、周囲のみんなから拍手が起こった。つまりお前があの場にいた半数以上と、一度でも面識があるということだ。どんな目立つ存在でも、知らないやつなら拍手はしないだろうしな。結構大人数だが、この近くには中学がたくさんあるからな。同中という可能性がある」
ちなみに、推薦入試の人数はごく少数であり、その場の半数というのは難しい話だ。しかも、内部生との顔合わせはほかの外部と同時になる。
「で、さっきの説明だ」
「さっきの説明?ああ、あのオリエンテーションのやつやな」
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷