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Heart of glass

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 放課後。硝は幸せそうな顔で「旧工芸室な」と言って去っていった。じらされた分その顔が憎たらしくて、いっそ行かないでやろうかとすら考える。
(でも、気にはなるんだよな)
 自分の力でコントロールできない好奇心に、貴志惟は旧工芸室までずるずると引きずられる。ぎりぎりで開けるかどうか悩んだが、結局ここまで来たのだからと扉を開けた。
「いらっしゃいまっせー!」
 クラッカーの破裂音に乗せて、妙な言い回しの歓迎を受ける。しばしぼうぜんと二人の間に沈黙が流れた。外で活動中の運動部の声と、鳩の羽ばたく音だけが落ちている。ふと、音だけクラッカーの落ちたフタを拾おうと、硝が動き出す。それを境に、貴志惟も尋ねた。
「・・・何だこれ?」
「何って、俺らの部活の創立祝い」
 部活が創立したために、今日の硝のテンションが高いのではないかと、貴志惟は推理していた。しかし、どうやら少し違ったらしい。
 硝の話によると、貴志惟の許可が取れた次の日に、部活自体は創立されていたのだそうだ。その事を貴志惟に隠し、先週一週間で部室を飾り付けをして、今回の企画を実行したらしい。彼の今日のテンションの高さは、ここから来ていたということだ。
 つまり、彼は貴志惟が「部活創設で浮かれている」と推理してくる事を、すでに予測ずみだったというわけである。
 一手先を硝に読まれた貴志惟に、ただならぬ悔しさがこみ上げてくる。ぽかんとした顔をしてしまった手前、硝の作戦成功を否定する事は無理だろう。
「もっと驚く事、教えたろうか?」
「は?」
「この部活、名前と部長が決まってん」
「部長はてめぇだろ」
「それが残念!」
 にっこりと笑う硝を見て、貴志惟に背に悪寒が走る。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷