Heart of glass
「この、学園日常推理倶楽部は、リーダーが部長やねん!」
聞きなれな言葉の羅列に、貴志惟は眉間にしわを寄せた。その反応が意外だったのか、硝は貴志惟と目線を合わせる。
「あれ?リーダーって呼ばれとらんかった?」
硝が話しているのは、賭け三日後に現れたタカが言ったあだ名である。しかし貴志惟がそれに気付くのに、多少のタイムラグが生じた。
「・・・呼ばれてるな」
気付いた事実に辟易しながらも、貴志惟は肯定する。硝は貴志惟を部長にして、部を創設したのである。
「俺に雑用させるなっつったろ!」
「せやけど、俺の下につくのは嫌やろ?」
否定ができない。硝の洞察力は見事なもので、貴志惟の性格を見事に言い当てている。実は、誰の下につくのも嫌なわけではないのだが。
「ええやんか、部長でも副でも」
言い出しっぺが何を言う。貴志惟はそう思って、硝をにらみつけた。
「せっかく作った部活やで?」
硝は笑いながら、こぶしを突き出した。うろんげにこぶしを見ていた貴志惟だったが、ついに観念したように、ため息を大きくついた。
「そうだな。互いの目標のために」
普通からの脱却を目指す硝。普通への回帰を求める貴志惟。二人のこぶしが、互いにぶつかり合った。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷