Heart of glass
「大体なんでそんなに気持ち悪いんだ!」
「ちょい浅井、そりゃひどいやろ!」
「あ、間違えた。『何でそんなに機嫌がいいんだ?』だった」
「本音や!先に言った方が本音や!」
「うるせぇな、いいだろ別に!」
クラスメートも慣れたもので、もう誰も二人の大騒ぎに反応するものはいなくなっていた。ぎゃあぎゃあとわめく二人の頭に、冊子上のファイルの面がぶつけられる。ぱっと見ると、そこには担任の姿が。
「はい、もう終礼の時間だよ。喧嘩しない」
まじめに叱っているつもりなのだろうが、先の二人の会話が聞こえていたため、彼の表情は必死で笑いをこらえていた。
説得力のない説教のあと、貴志惟は巻きこまれたと言わんばかりに硝をにらむ。今回硝はちっとも怖がらずに、むしろ快活に笑って見せた。
「答えは放課後わかるさかい、楽しみに待っとき」
貴志惟は正直、「じらし」というものが嫌いな方だ。しかし、担任の監視の強い中でばれないように聞くほどの技術はなく、彼は我慢せざるを得なかった。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷