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Heart of glass

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「人好き?誰が?」
「せやから浅井が」
 思いもよらぬ言葉をかけられた貴志惟は、ものすごくまぬけな顔で硝を見た。その顔に思わず笑いながらも、彼は言葉を続ける。
「せやから、『普通』に憧れとる」
 初めて会ったときから、うすうす感じていた。そして以前、無意識に「普通」とくり返す姿を見ていたので、それはほとんど確信に変わっている。しかし、当の本人は鳩が豆鉄砲を食らったような顔のままである。。
「俺が、浅井に近づいた一番の理由は、それや」
 人が好きだからこそ、普通になりたい少年と、人が嫌いだからこそ、普通でいたくない少年。彼らは世界ではなく、根本から正反対だったのだ。そして正反対ゆえに、磁石のようにひかれあう。互いの存在に憧れていたのである。
 ぽかんとした顔を隠せない貴志惟の目の前で、硝はねこだましのようにパンと手を叩いた。貴志惟が自分の世界から戻ってくる。
 それを確認した硝は、戻ってきたばかりの貴志惟に、大きく伸びをして見せた。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷