Heart of glass
「で、何で俺はそんな相手を探してん?」
「簡単だろ?同じ世界に理解してくれる相手がいなければ、逆に反対側の世界には多くいるかもしれない。少し冒険心のある人間なら、いくらでもたどり着く結論だ」
それ以上、硝が何かを聞く事はなく、貴志惟も話を続ける事もないまま、数十分が経過した。何のためでもなく、多田機械的にチャイムの音が鳴り響いた。
沈黙に耐えかねた硝が、口を開いた。
「かなわんなぁ、さすがは俺の尊敬する男や」
「その発言のほうがナルシストっぽいぞ」
「ははは・・・」
乾いた笑いをした硝は、貴志惟に尋ねてきた。
「なあ、俺の推測も、少し聞いてくれんか?」
何の推測だかわからない貴志惟がぽかんとしていると、硝は勝手にその推測とやらを語りだした。
「俺が浅井を真逆だと思ったんは、もっと理由があんねん」
「おい、推測とやらはどうした」
気になってはいる貴志惟の疑問を、硝は解決することなく話を続けていく。
「浅井って、人好きやろ?」
言葉を無視されたあげく、わけのわからない事を言われ、彼は硬直した。一分ちかく静寂を過ごし、彼の口に動く指示が出された。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷