Heart of glass
「俺が浅井にこだわる理由って何やろな?」
それは、もう賭けの適用外の範囲だった。しかし、今回の情報だけでは貴志惟にも解決できず、多少なりとも興味があった。ぎりぎり切れない程度に間を空けて、ふわりと頼りなく話をつなぐ。
「過去の友人の行動が気になるんだろ」
貴志惟は少し、カマをかけてみた。その言葉に、彼は眉間にしわを寄せる。機嫌をそこねたのか、はたまた本気で理解できていないのか。そこでもっと具体的に、貴志惟は名前を出してみた。
「リンだっけか?」
その名前に、硝の動きと顔色が変わる。心理学とか、そういう難しいことを知らなくても、動揺していると解った。貴志惟は勝利を確信する。
「人間の行動を見聞きしただけで、九〇パーセントの正解率をほこる不良探偵の力をえれば、その友人の行動もはっきりと解るとでも思ったんだろ?ま、実際は残念ながら、そんな器用じゃねぇけどな」
「リンは関係あらへん!」
珍しく声を荒げる硝に、貴志惟は目を丸くする。どっちかというといつも飄々としていて、硝の輪郭はいつもぼやけた印象があった。しかし同時に、貴志惟の二つの予想が、一つの真実へと進化する。
「そうか。それなら、不良探偵への憧れってところか?」
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷