Heart of glass
「それに、『仲間思いでなくてもいい』ってことは、お前が期待したのは推理力だ」
「浅井の推理力なんて、俺は知らんて」
「知らないわけねぇだろ」
硝の精一杯の反論を、ため息をつきながら貴志惟は言い切る。彼には、きちんと根拠があった。しかし、硝はその根拠に気付かない。
「さっき、不良探偵の話を持ち出しただろ?」
「せやな」
「だったら、何でさっき聞かなかったんだ?『不良探偵とは何だ?』って」
硝は言葉をつまらせた。やられっぱなしではあったが、硝は計画的に話していた。だが、小さな穴からそれはやぶれだす。
貴志惟は、床に置いてあった自分のカバンを、教卓の上に置く。ただそれだけで特に意味もないのだが、その行為に硝はびくりと震えた。
「なぜ推理系クラブを作りたかったのか?それも起因するんだろ?」
「まいったなぁ・・・、全部おみとおしかいな」
「全部じゃねぇよ。ただ、不良探偵が入部する価値があると思われる部活といえば、それしかなかっただけだ」
そういうと、貴志惟は視線をはずす。まるで自分の推理に、嫌悪感を持つような表情で。そんな彼を見て、硝も似合わない無表情でうつむいて視線を変えた。小さな声でつぶやく。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷