Heart of glass
人好きと人嫌い
翌朝。貴志惟は教室の前にいた。貴志惟の推理が当たっていれば、この扉の先で今までとは違うところがあるはずなのだ。大きく息を吐いてから、いたって平静に扉を開けた。
「おお!おはよう、浅井」
元気よく挨拶してきたのは、いつも遅刻してくるはずの硝だった。朝からテンションの高い硝に、貴志惟はなかばため息をつく。
「・・・なんでお前がいるんだよ」
「ひどっ!もう迷惑かけんよう頑張ってきたんに、なんやその反応!」
出来るならもっと早くにして欲しかった。そんな感想をため息に変え、彼は自分の席に着く。続いて立って迎えていた硝も席に着いた。
「なんや昨日は悪かったなぁ。俺がいなくて寂しかったんとちゃう?」
「むしろ一人で悠々と楽しい一日を過ごせたぞ。なあ、多田?」
硝の奥で二人を見ていた義章に話を振ると、彼も笑って答えてくれた。
「そうそう。なんか生き生きしてて面白かったよ」
「うわっ!生き生きとしとる浅井とか、めっちゃ見たかったわ!」
そういう硝の表情は、まったく見たそうではなかった。今まで見てきた感じでは、愛想笑いは彼の特技のはずだが。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷