Heart of glass
皆勤賞を目指していた春はどうした?
そんなくだらない後悔にかられながら、硝はベッドで寝がえりを打つ。ばふっという音とともに、空中をホコリが踊る。そんなホコリの一つ一つの舞い方すら気になるほどに、彼の精神はつまっていた。
「卑怯や・・・俺」
貴志惟をあれだけ卑怯だと責めておいて、自分がこのありさまではまるで示しがつかない。
寝返りを打ったことにより、捨てるのがもったいないからということで、修理を待っている通学カバンが目に映る。壊れたのは確かだが、本当は少しの穴とチャックの故障くらいで、わざわざカバンを取りかえるほどでもなかった。あの時大きく開いたように見せたのは、もともとカバンに開いていた穴と故障したチャックを、うまく組み合わせただけである。
それでもあの時、硝は貴志惟に会うより、カバンを替えることを選んでしまった。
(弱いなぁ)
そんな自分に嫌気がさす。どんな人間も持っていることが、彼にはとても苦痛だった。
(明日は行かんと・・・。今日の授業の話も気かなあかんし・・・)
暇を持てあました硝は、明日の予習をしようとやっと身を起こした。五時間ぶりのアクションである。寝ていたのだろうウサギも動き出したころ、ふと太陽が西へ動き、夕日が硝の部屋に差す。そしてその光が机にあたり、上にある写真立てを差した。寝かせておいたはずの写真立ては、母親が勝手に直したのか立たされている。
楽しそうに満面の笑みを浮かべる三人の子供を見て、硝は再びベッドに寝転がる。その視界に、写真が決して入らないように。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷