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Heart of glass

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「やっぱり俺の悪口になっとるやないか!」
 いまさら気のせいではないと気付いた硝が、貴志惟にツッコミを入れる。が、それは綺麗に流されてしまった。
「で、喧嘩を売った。ここで分かるのが四つ目の知識がないということと、お前が不良だったとしても日が浅いということだ。また、単独行動型だけに交友関係が浅いとも言えるけどな。でも普通なら、やっぱり耳にしたことがあるだろう」
 あまりにも遠まわしで時間ばかりを食う貴志惟の話し方に、今度は少年がいらだちを隠さなくなった。なかば、逃げられない現状に自棄(やけ)になったとも取れる。人目も気にせず、彼は声を荒げた。
「何が言いてぇんだよ!」
 それでも怯まない貴志惟は、むしろわざとらしく怖がって見せた。それからあきれたように、しかし安心したかのようでもあるため息を一つ。
「これほどのヒントがあるのに、まだ気付かないってことは、やっぱり知らないんだな」
「知らないって何を・・・」中途半端なところで、言葉を止めた少年の顔が、みるみるうちに青くなっていく。貴志惟は複雑な表情で、彼が青くなるのを見ていた。硝にかぎっては、相手にされなかったことに対して、ぶつぶつと文句を言っている。漫画なら、頭にキノコの一つでも生えていそうな様子だ。
 貴志惟と少年の間に、しばしの沈黙が走る。しばらくして口を開いたのは、少年のほうだった。彼は貴志惟を指さしながら震える声で尋ねる。
「お前・・・、まさか・・・不良・・・」
 ぞっとするほどの不敵な貴志惟の笑みを前に、少年はそれ以上言葉を発することができなくなる。
「御名答」言葉を止めた少年に代わって、貴志惟が肯定する。浮かべられたその笑みには安心と不安と、なんらかの自信に満ちたようにも見える。
 驚きに体の動力を奪われた少年をよそに、貴志惟はしゃがみこんでいる硝の襟首をひっぱった。慎重さの姓で首が絞まった硝は、苦しそうに開放を求めた。が、開放してくれる見込みがないと判断すると、その体制のまま尋ねる。
「何やの?いきなり」
「今のうちにさっさと行くんだよ」
 百八十五以上の長身の硝を、百六十ほぼジャストの貴志惟は、ずるずると引きずって商店街を出た。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷