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Heart of glass

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「しかもその制服、三駅先の不良で有名な第四高校の制服だろ?あそこの生徒は、不良でなくとも奴らのうろつく時間帯、うろつかない時間帯を把握している。つまり、お前が不良だろうとそうでなかろうと、時間帯に関しては知っているはずだ」
 少年が後ろへ退く。が、今度は貴志惟が少年の腕をガッチリとつかんだ。少年がびくりと動く。喧嘩を売ったからには、途中で投げ出す事は許されないようだ。
「三つ目の対象の話に入るぞ。いくら不良がいない時間帯だからといっても、それっぽいのは路地裏あたりを探せばいくらでもいるはずだ。無駄に塾にこだわっちまってるんだろうが…。それで目につけた相手が、こいつだ」
 言いながら、貴志惟は硝を指さした。指された硝は、少し驚いた顔をして貴志惟を見ている。初めにムカつくと声をかけられたのは、実際貴志惟の方が早かったのだ。それなのに、なぜ頑なに彼は「硝に目をつけた」と言うのか。疑問を抱えた硝にも解るよう、いやに丁寧に貴志惟が説明を始めた。
「向こう側から歩いてきたお前の眼には・・・」
 そこで言葉を止めると、彼はそっぽを向いて小さく舌打ちする。それから不良をにらみ直して続けた。
「お前には、背の低い俺は映っていなかった。映ったのは、能天気に鼻歌をくちずさむ、くそ真面目な格好をした背の高い男。しかも制服を見るかぎり、喧嘩に強い学校ではない。ここまで制服を真面目に着てんだ。校則違反にもおびえるほどの、弱っちぃ男に見えたんだろ」
「なんや後半、ただの俺の悪口になってへんか?」
「気のせいだ」と、貴志惟は硝の心配を一掃する。もちろん気のせいなどでないのは確かなのだが。
「ま、とりあえずこいつなら何かあっても安心だと油断して近づいたわけだ。でも見えなかったそこに、俺がいた」
 貴志惟は再度舌打ちをはさんで続ける。
「小さくとも殺気といらだちをあらわにした、いかにも不良な男がな。そこでお前は困った。が、隣でこんな奴が鼻歌歌ってんだ。俺が無害だなんて、賢いお前にはすぐわかったろうな」
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷