Heart of glass
「鼻歌歌う妙にでけぇ奴と、いらいらと殺意もらしてるチビ見かけたら、つっかかるに決まってんだろが!」
貴志惟が少年の「チビ」の台詞に反応する。先ほどは貴志惟だったが、今度は少年がNGワードを言ってしまったのだ。
チビ呼ばわりされた貴志惟は、少年の方につかつかと歩みより、びしっと彼の顔を指差した。
「できそこないの不良がほえてんじゃねぇよ」
神秘的だった貴志惟の灰色の瞳は、一気に逆らえない強さを宿していた。出来損ない呼ばわりされた彼は、ちっとも動けず、そのまま貴志惟が横を過ぎていくのを見送りそうになる。が、とっさに彼の腕をつかんだ。
「俺のどこができそこないなんだよ!」
「…なんだ、そんなこと聞きたいのか?」と、貴志惟は平然と返した。硝が貴志惟の隣に移動する。恐々としていたはずが、なにやら楽しそうな様子へと変わっていた。今の一瞬で彼にどんな変化が起こったのか、それは不明である。
少年に止められた貴志惟は、そのまま手を無理やりほどくと、真正面から彼を見上げた。ちなみに彼の身長は百七十センチ位、貴志惟と硝の、中間というにふさわしいくらいのサイズだ。
貴志惟は少年に見えるよう、指を四つ立てて見せた。
「その理由は四つある。時間、持ち物、対象、最後は知識だ」
「は?」ぽかんとする少年に、貴志惟は人差し指一本だけ残すように指をしまい、説明を始めた。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷