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Heart of glass

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 放課後を迎え、貴志惟と硝の戦いが始まった。下校に関する、恒例の戦いである。とうとうクラスメートたちもどちらが勝つかで賭け事みたいなことをし始めていた。ちなみに今の倍率は貴志惟が百パーセントだ。
 そんな中、珍客が訪れた。
「何してんの、リーダー?」
 訪れた珍客は、クラスメートはおろか、廊下にいるもの全員の視線を集めていた。なんと現れたのは、あの赤髪の少年だったのだ。今日もやはり制服は来ておらず、飛行帽のようなものを頭にかぶっていた。そんな彼が、ドア枠に寄りかかりながら、不思議そうな顔で二人を見ているのである。
「おお、タカ!久しぶりだな」
 ためらいもぜずに彼に近づく貴志惟を、その場にいた全員が驚愕の目で見る。タカと呼ばれた黒装束の少年は、貴志惟に冷めた視線を送った。
「久しぶりじゃないでしょ。一昨日も昨日も、毎日電話での会話なら、うるさいくらいしたよ」
 実はほぼ毎夜話していた貴志惟の幼馴染みというのは、この赤い髪が特徴的なタカなのである。硝の事を知っていたのも、ただ貴志惟の周辺から得られただけで、特別なことは一切していなかったのだ。
 平均身長はあるタカは、貴志惟を見下ろす形で話していく。
「昨日のアクロバットに関して…」
 体勢の問題もあって、それはまるで警察の取調べだ。さすがの貴志惟も一歩、二歩と彼から遠のく。
「いや、その話はまた後でな…」
「『あと、あと』って言ってて、いつも忘れるんじゃないか」
「今回は忘れないって」
「ついこの間も同じセリフを言ったの、覚えてる?」
 覚えているだけに言い返せない貴志惟は、いきなり自分の机に戻るとカバンを取った。そしてタカを無視して硝に話しかける。
「よし。帰るぞ、奥椙!」
 タカから逃げる気満々である。もちろん硝は利用にすぎない。そんな貴志惟に、硝は驚きながらも尋ねておく。
「え!ええんか?」
「気分が変わったんだよ。これ以上変動する前に早く来い」
 そう言うと、さっさと貴志惟はタカの横を通りすぎて行った。硝のセリフは「一緒に帰ってもいいのか」という意味もなくなかったが、一番の意味は「タカを無視していいのか」だった。真意をわざと無視しているのか考えながら、置いていかれた硝があわてて彼を追いかける。何を思ったのか、その間タカは微動だにしなかった。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷