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Heart of glass

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「それはまた美少女やな!リンとはちゃうんやろなぁ…」
 舞い上がった拍子の硝の一言に、貴志惟は驚いた。リンと聞いて連想されたのは、義章の言っていた硝の幼馴染みの名前である。二人いるうちの一人で、なんらかの原因で転校したと聞いた。話を聞くかぎりでは、幼馴染みの二人とあまり仲がよくない感じだったが。まさか転校しただけで、未だに仲がいいのだろうか?
「リンって誰だ?」何も知らないふりをして貴志惟がたずねると、
「ああ、うちの妹や。弟妹がおってな?その妹が燐(りん)。ちなみに弟は硫(りゅう)っちゅーねん」と、飄々と答えた。
 あまりの紛らわしさに、貴志惟はため息をつく。もしリンが幼馴染みのほうを指した言葉だった時は、せっかくそろいつつあるピースが、一つ不確かになってしまうところだった。
 そんな貴志惟の気持ちも知らない硝は、いきなり話題を変えてきた。
「そういえば、やっぱり喧嘩とかしたんか?」話題はどうやら中学時代の話のようだ。
「……黙秘権を行使する」
「なんやそれ。ああ!もしかしてめっちゃ弱かって、負けてばかりやったとか?」
「んなわきゃねぇだろ」
 冷静であったはずなのに、条件反射で返してしまった。もう話の中に引きずりこまれたのは言うまでもない。もとより、関西系でかつ知能の高い硝の話術にかなうはずもなかったのだ。渋々貴志惟は話を続けた。
「殴る蹴るが苦手だったんだよ」
「つまり…」
「ケンカを観戦したことはあるが、巻きこまれるような馬鹿はしてないってことだ」
「馬鹿っちゅうのは言いすぎやないの?」
 硝の不良を気遣ったセリフに、「言われなくとも」とにらみ返した。硝は怖がったふりだけして、しゃべりながらも食べ続けていた弁当をしまう。
 貴志惟が大食いなのは記してきたが、かわって硝は少食なのである。とはいえ貴志惟が体の割によく食べるのと同じで、硝も体のわりに食べないという範囲での少食だ。なので、弁当が一段だとか、握り飯一個で満腹になるような便利な体ではない。
 一方の貴志惟は、昼休みの長さなんて関係なしに、また新たにパンの袋を開け始めた。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷