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Heart of glass

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 それから毎日、彼は硝から話しかけられるようになったのである。
 そして今に至る。逃走をはかった彼だったが、身長差に比例した脚の長さの差により、すぐに追いつかれてしまった。おそらく今ほど彼が自分の低い身長を恨んだことはないだろう。追いついた硝は先ほどのやりとりを掘りおこす。
「卑怯やないか!」
「とらえ方次第でプラスになる言葉があるからって、それが本当にプラスの意味を持つとは限らねぇだろうが!」
「ええやんか!それだけでいくらでも人生楽しめるんやで!」
「勝手に一人で楽しんでろ!そこに俺を巻きこむな!」
「楽しむ人数は多いほうがええやろ!」
「楽しむ人数に俺を加算するなっつってんだ!」
 あまりに大声の会話なので、周囲から注目が集まる。すでに目立ちつつある存在になってしまったが、彼は目立つことが苦手だ。そのためいらだちを必死に抑えて、努めて普通の音量にする。
「何がしたくて俺なんだ?」
 今まで聞いていないどころか聞く気もしなかったが、よく考えてみれば理由が存在するはずだ。そうでなければ、一人に異常執着するなど明らかにおかしい。彼の質問に硝は満面の笑みを見せる。よくぞ聞いてくれた。顔にそう書いてある。その瞬間、答えを聞く前に彼は尋ねたことを後悔した。それを知ってか知らずか、硝はガッツポーズを決めて、誇らしげな顔をする。
「一緒に部活つくろう!」
「却下」
 彼は即答した。硝は納得がいかない様子を、表情にきれいに出す。いかにも傷つきましたという雰囲気を放ったまま立ち止まられ、しかも周囲の目もこちらに向いたまま。なんだかこれでは彼が悪者のようだ。「はあ」という彼の大きなため息を聞いた硝は、期待をこめてちらりと彼を見る。すると彼は、ビシッと硝を指した。
「じゃあこうしよう。今日から金曜までの五日間、その間は勝手にしろ。俺はその間にお前が作りたいとかほざく部活がどういう部活なのか、それを考える。で、金曜にお前に教える。もしその考えが当たってたら、俺の言うことを聞け。間違ってたら、お前の要望通り、部活とやらを一緒にやってやる」
 今までの対応にしてみれば、かなりいい扱いだ。もちろん数多くある部活を当てるのはかなり難しい。すぐに承諾されるかと思ったが、その前に硝は尋ねる。
「・・・当てる部活って、どんくらいの幅なん?」
「テニスならテニス部、手芸なら手芸部、ただ美術部と漫研みたいなものなら、ひっくるめて作画系とさせてもらう」
 その言葉に、再び硝が悩みだした。周囲は、なぜ九十パーセントの勝率を確信できるその申し出を受けないのかと、疑問を抱く。しばらくして、彼は大きくうなずいた。
「うしっ!やっぱり今までの扱いよりはマシやな。その挑戦状、受けたるわ」
 硝の勝利が決まったも同然のその状況に、周囲の人間から拍手がわきおこった。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷