Heart of glass
「お前に家のこと話したか?」
「いいえ」
硝は首を丁寧に振る動作までつけて返答する。
「知らず知らずに、自己紹介の時に学校名でもいったか?」
「いいえ」動揺に洞察気で否定。
「俺と同中の奴に会ったか?」
「いいえ…って、なんやのこれ?嘘発見器みたいやな」
ケタケタと笑っていた硝だったが、貴志惟の表情が驚きへと変わっていく。その様子に、硝は驚きながら彼に尋ねた。
「もしかして、図星やった?」
わざわざ肯定するのは負けを認めるようで、そんな妙なプライドから貴志惟はフンと視線をそらすしぐさで肯定した。そんな学校が実在するのかという驚きと、まるでアイドルを見るかのような奇異と羨望をこめた瞳で、硝は貴志惟を見続けてくる。
その時、貴志惟の頭の中で何かがはじけた。「ひらめく」というのはこういうことを言うのだろう。答えが分かった瞬間に硝の行動のほとんどが理論づけされていった。確実にピースがそろいつつある。あとは確かな証拠がほしい。貴志惟は授業中にもかかわらず、携帯電話を取り出して幼馴染みにメールを送った。迷惑なことに二次被害なんて考えてもいない。二次被害とは、授業中に携帯が鳴るというアクシデントのことだ。しかし、すぐに『了解』という返事が送られてきた。相手もまた、授業中の携帯捜査など、へでもないようだ。
きっと、明日までに全てのピースがそろうはずだ。
貴志惟は硝を一瞥してからほくそ笑んだ。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷