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Heart of glass

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 五分後、二人はまだ資料室にいた。
「なら教科書を、俺が持てばいいだろが!」
「せやけど問題集の方が、軽うて浅井が持ちやすいやんか」
 彼らは今までの五分間ずっと、持って行く物でもめていたのである。基本的に教科書は、薄く広い形をしていた。が、紙質の問題か、重量は結構ある。それに対し問題集は、紙質が悪いために軽いのだが、小さめで厚みのある冊子だ。同じ冊数が束ねられているのだが、なぜかそこに問題が生じていた。小柄な貴志惟に軽いものを持たせてやろうという無駄な親切心が、問題集を渡そうと硝に思わせる。だが、身長がたりないために問題集を運ぶ時、特に階段などでは腕を伸ばしていることができないのだ。おせっかいな彼は、それも気にかけているのである。
「ずっと腕曲げて上らなあかんのって、つらいんとちゃう?」
「ああ、つらいな。じゃあ、半々で持てば…」
 貴志惟はそういいながら手を伸ばすと、その先にある二束を硝が抑えた。そして、
「それじゃあ何にも解決せんがな!」
 と叫ぶ。呆れと面倒くささを超えて、そこに嫌悪感すら感じる貴志惟は、眉間のしわをいっそう濃くした。
「うるせぇな。なら、やっぱり俺が教科書を持てばいいんだろうが」
「でも教科書めっちゃ重いんやで!ただでさえ小さい浅井の身長が、今よりさらに縮んでまったら・・・」
「縮むか、このバカが!」
 そう言うと、貴志惟は硝の手が離れた教科書を二個、すばやく両手で持った。そのままずかずかといらだちを隠さずに、出口に向かって歩いて行く。そんな貴志惟に置いていかれないように、硝はあわてて問題集を手にすると、小走りで出口に向かった。
 二人が教室に帰ると、教師はあきれた顔で迎えてくれた。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷