Heart of glass
「あの建物の中にあるんや」
「三階の渡り廊下の?」
身体測定の時は猛スピードで駆けぬけたためか、貴志惟は覚えていなかった。通ったという事だけはなんとなく覚えてはいるのだが。
「せや。ベランダに作られた特別施設は、三つの教室が入っとんねん」
「三つ?」不思議そうな顔の貴志惟に、硝はなぜか自慢げに教える。
「共同教室の三つや。資料室と図書室と第三パソコンルームやな」
ちなみに第三パソコンルームは教師用もしくは来賓用で、生徒は使用できないのだそうだ。生徒用は一号館に二室、二号館に三室あり、先述した通り、バラの回廊からも映像ルームと兼用の大型モニター付きの広いパソコンルームが存在する。そして共同教室枠の図書館は、バラの回廊につながっているものと異なり、教科書の補足資料だのなんだのといった、やはりこちらも教師用といえる内装だという。が、こちらはパソコンルームとは違い、生徒の利用も許可されているとか。結局資料室に道具や機械が、図書室に書籍や図鑑が、と資料も別れているわけだ。
階段を下り、ベランダに出た二人は特別施設に向かう。貴志惟がさっさと入ろうとするのに対し、硝はきょろきょろと辺りを見回した。そして施設の裏から出てきた、彼らの母親と同年代くらいのおばさんに声をかける。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷