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Heart of glass

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 一方、硝をまいて帰った貴志惟は、風呂に入る準備をしていた。
「ズボンどこだっけか・・・」
 脱ぎ散らかした服であふれている彼の部屋は、ズボン一個探すのも大変な状態だった。そんなとき、彼の携帯が鳴り始める。恐る恐る携帯を見ると、思ったとおりの人物からの電話だった。深呼吸してから通話ボタンを押す。
『バッカじゃないの!』
 耳から可能なかぎり遠ざけているのに、キーンとするほどの大声で怒鳴ってきたのは、彼の幼馴染みだった。やはり彼が吹きぬけを飛びおりたあのシーンを見ていたらしい。まったく恐ろしい現実だと、貴志惟は携帯ごしに文句をつのらせる幼馴染みに視線を投げかけた。フンッと満足げに鼻を鳴らす幼馴染みに、貴志惟はおそるおそる話しかける。
「・・・やっぱり見てたのか?」
『見られたくないなら、アクロバットは避けたほうがいいよ』
「してなくたって監視してんだろうが」
『見守っているって言うほうが正しいと思うけどね』
 神経質な部分に触れてしまったせいか、幼馴染みがピリッとした。慌てて貴志惟がわびると、幼馴染みは彼の行動への制限に念を押ししてから、電話を切る。明日はいい加減、顔を合わせるはめになる気がし始めた。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷