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Heart of glass

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「何しとんねん!その行為は浮気やろ!」
「何がどうなって、これが浮気になんだよ!説明してみろ!っていうか、浮気の意味解ってねぇだろ!」
「でも俺まだアドレスもらってへんのやで!」
「赤穂、お前のアドレス、あいつもほしいってさ」
「俺はいいけど、たぶん違うぞ」
 そんなことくらい、貴志惟も解っている。わざとそらした話題を悪意なく戻され、貴志惟は硝をうっとうしく見た。硝はその視線がいかにも刺さっているかのような、痛そうな顔をしている。心なしかその瞳がうるんでいるようにも見えた。精神はそうとう弱いらしい。義章と俊介に礼を言った貴志惟は、アドレス交換を申し出る硝を無視し続け、そのまま自分の席についた。あきらめた硝も同じく席につく。
 硝は購入したばかりの弁当を取りだす。その中身はなんとも和風で、おいしそうだった。が、貴志惟は眉間にしわを寄せる。それは怪訝というより、ひどい疑問を抱いているという顔だ。彼が疑問を抱いたのは、弁当と飲み物の組み合わせであった。先述したとおりの純和風な弁当に対し、その隣に置かれた黄色のパックの中身は。
「・・・バナナ・オ・レ?」
「新発売やってん。うまそうやろ?」
「うまそうだけど、あわねぇだろ」という言葉を呑み込んだ。確かに購買には洋食の弁当やパン類もあるが、組み合わせはあくまでも個人の趣味・味覚の範囲であり、他人が口を出せるものではない。貴志惟はカバンをわきにかけたまま、パンを取り出していく。
 そして今度は硝があぜんとする側であった。貴志惟の出すパンの量だ。通常、育ち盛りといえど、一度に食すパンは五個か六個。だが、貴志惟が取り出したパンはそれを越していた。目測で十はある。しかもまだガサガサと言っているので、鞄の中に最低でも三個はあるようだ。思わず尋ねる。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷